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旅人算とCVP分析



算数の典型的な文章題「旅人算」

「旅人算」とは

算数の文章題の典型的な問題の1つに「旅人算(たびびとざん)」があります。
速さの計算をベースにした問題で、名称は知らなくても、以下のような例題を見れば「このことか!」とお分かりいただけるのではないでしょうか。
たかし君は分速80mで学校に向かって歩いています。
たかし君が自宅を出発して10分後、自宅でたかし君の忘れ物に気づいたお母さんが自転車(分速240m)に乗ってたかし君を追いかけました。
さて、お母さんは何分後にたかし君に追いつくでしょう?
このように、後から追いかけるタイプの旅人算(これを「追いつき算」ともいうようです)のほか、お互いに離れたところから向かい合って何分後に出会うかを計算する旅人算(これを「出会い算」ともいうようです)があります。

算数の典型的な問題として中学校の入学試験などで出題されるほか、就職試験(SPI試験)などでも頻繁に取り上げられることから、どこかでこのような問題を見たことがあるかとも多いかと思います。

旅人算(追いつき算)の解法

先ほどの旅人算(追いつき算)の例題ですが、次のように考えて解くことができます。

お母さんが出発した時点でのたかし君との距離

分速80mで歩いているたかし君が10分間で進む距離は、以下のように求めることができます。

 80m/分×10分=800m

すなわち、お母さんが自転車に乗って自宅を出発した時点で、たかし君とお母さんは800m離れていたことになります。

たかし君とお母さんの差が1分ごとに狭くなる距離

徒歩のたかし君が1分間に80m進むのに対し、自転車に乗っているお母さんは1分間に240m進むということは、1分間で次の距離だけ、お母さんとたかし君の距離の差が縮まることになります。

 240m/分-80m/分=160m/分

お母さんがたかし君に追いつくのに必要な時間

お母さんが出発した時点でたかし君とは800mの差があったものの、1分間につき160mずつその差を縮めていく訳ですから、800mの差を縮めるのに要する時間は次のとおりとなります。

 800m÷160m/分=5分

したがって、お母さんは自宅を出発して5分後にたかし君に追いつくこととなります。

なぜ、旅人算の計算を?

このサイトでどうして旅人算を扱ったのか、不思議に思っていらっしゃるかもしれません。
「簿記の試験に合格した後は就転職の試験が待っているから、その対策に…」という理由もありますが、理由としてそれほど強いものではありません。

実は先ほど見た旅人算(追いつき算)の考え方は、日商簿記2級などでよく出題されるCVP分析(損益分岐点の計算)でも活用できるものなのです。

従って、どちらか一方の計算をマスターすれば、もう一方の計算応用が利くものですから、この記事で両方ともマスターして頂き、簿記検定も就転職の試験も乗り越えて頂きたいという想いで取り扱うことにしました。

CVP分析(損益分岐点分析)とは

CVPとはCost(原価)・Volume(量)・Profit(利益)の頭文字を繋げたもので、販売量を変化させることで原価や利益がどのように変化するのかを分析することをCVP分析と言います。

このCVP分析の中でも、特に重要なものが損益分岐点分析です。
損益分岐点とは、端的にいえば損も得も出ない“トントン”の状態のことであり、損益分岐点分析とは、損益分岐点に達するにはどれくらいの販売量(売上)が必要かを計算する分析です。

ビジネスの世界では利益の獲得が第一であるものの、必ずしも上手くいくことばかりではなく、想定していたような売上や利益を上げられない可能性もあります。
ただ、それでも損を出す(赤字になる)ことだけは避けなければならない訳ですから、損を出さないために必要な販売量(売上)を把握しておき、そのラインは死守するように努力しなければなりません。

CVP分析の前提知識

これを読んでいる方の中には、CVP分析はもちろん、CVP分析を扱う工業簿記や原価計算の内容を学習されていない方もいらっしゃるかと思います。
ただ、CVP分析を理解する前提知識は非常に単純です。

最低限理解しておくべきことといえば、「コストは(ざっくりと)変動費固定費に分ける」ということくらいです。

例えば、パン屋さんを例に考えてみましょう。

パンを焼くための材料費やかまどの光熱費などは、パンを焼けば焼くほど比例的に増えると考えられます。また、パンを販売したときにパンを包む袋なども、販売量に比例して増えるはずです。 このように、生産・販売量が増えれば増えるほど比例的に金額が増えるコスト変動費といいます。

一方、家賃や火災保険料、電気代の基本料金部分などは、契約するだけで一定額が発生し、パンを焼いて販売する個数が増えても金額は変わらないのが通常です。
このように、生産・販売量に関わらず一定額が発生するコスト固定費といいます。

携帯電話で言えば、毎月固定で発生する金額と、話したりデータ通信をすればするほど増える金額があるのに似ていますね。

企業のコストは、必ずしもはっきりと変動費と固定費に分かれる訳ではなく、中間的なものも多いのですが、CVP分析では単純化して計算できるよう、ある仮定の下で変動費と固定費の2種類にざっくりと分類して計算するのが一般的になっています。

損益分岐点分析の例題

では、具体的な計算を次のようなパン屋さんの例で考えてみましょう。
たかし君はパン屋さんを開業しました。
パンを1個作るために変動費が@80円かかる他、お店の家賃などの固定費が1日当たり800円発生します。それに対し、出来上がったパンは1個@240円で販売しています。
損益分岐点となるには、1日何個のパンを製造・販売すればよいでしょうか。
実はこの計算、先ほど解いた旅人算(追いつき算)とほぼ同じステップで解き進めることが可能です。

1個も作らなくても発生するコスト

固定費が1日800円かかるということは、パンを全く作らなくてもコストは800円発生することになります。
それに対し、パンを全く作らなければ販売できるパンが無い訳ですから、売上(収益)は0円です。

従って、生産・販売量が0個の場合、コストの方が800円多いことになります。
言い換えると、パンをまったく生産・販売しなければ800円の赤字ということになります。

パンを1個売るごとに解消していく赤字

パンを1個焼いて販売すると、変動費分だけコストが増えるので、コストは1個につき80円ずつ増えていくことになります。
それに対して、パンの売価は@240円ですから、1個販売するごとに売上(収益)は240円ずつ増えていきます

すると、パンを焼いて販売する量が1個増えるごとに、原価が80円ずつ、売上が240円ずつ増えていくわけですから、

 @240円-@80円=@160円

で、赤字が160円ずつ解消していくことになります。
すべての赤字が解消する量を販売してもなお、さらにパンの販売量が増えれば、1個につき160円ずつ利益が増えていくことになることから、この額を貢献利益といいます。

固定費分の赤字を解消するために必要なパンの販売数

1個のパンを生産・販売すると@160円の貢献利益を獲得できるわけですが、パンを全く作らない場合には固定費の800円分の赤字を抱えている訳ですから、1個だけ生産・販売しても、赤字を160円分解消できるだけで、まだ640円の赤字を抱えたままになってしまいます。

ですが、パンを1個生産・販売するごとに、貢献利益の160円分ずつ固定費から生じる赤字を解消できる訳ですから、800円の赤字を解消するために必要なパンの生産・販売数は、次のように計算することができます。

 800円÷@160円=5個

したがって、1日につきパンを5個生産・販売すれば、たかし君の営むパン屋さんは赤字を回避できる、すなわち損益分岐点の販売量ということになります。

意図的に旅人算の数字に合わせたため、金額や数量の数字が小さくなってしまいましたが、確かに損益分岐点分析(CVP分析)は旅人算と同様の考え方で解くことができそうです。

旅人算とCVP分析の比較

簿記の教科書では、CVP分析を視覚的に理解できるツールとして、販売量を横軸、金額を縦軸としたグラフを用いることがあります。

売上(収益)を示すグラフは販売量が0個の時には当然ながら金額も0円ですが、原価の方は販売量が0個の時でも固定費分の原価が発生するため、金額は固定費の分だけ上乗せされた状態になっています。

そこから、生産・販売量が増えるごとに、コストや売上(収益)が増えていく様子をグラフにすると、次のようなグラフになります。
一方、冒頭で見た旅人算の方もグラフにすることができます。
縦軸を自宅から進んだ距離、横軸をお母さんが自宅を出発してから経過した時間とすると、たかし君の進んだ距離とお母さんの進んだ距離は、次のようなグラフになります。
2つのグラフを並べてみると… 数字の意味が違うだけで、それ以外は同じグラフであることが分かります。

結局のところ、どちらも…
  1. 最初の差を計算する
  2. 差が縮まっていく量を計算する
  3. 1.を2.で割って、追いつく(等しくなる)点を求める
ということをやっているに過ぎないといえます。

シンプルに考えるとこの2つの計算が同じ発想でアプローチできることを知っていると、どこかで役に立つかもしれません。
役に立てば幸いです。

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