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『圧縮記帳』って何?



日商簿記2級の内容に加わった『圧縮記帳』

平成29年度の日商簿記2級試験から、『圧縮記帳』が出題内容に加わることとなりました。
従来は1級でしか出題されない内容だった圧縮記帳ですが、実務で広く普及していることから、今回の出題区分改定で2級でも扱われる内容となりました。

圧縮記帳は、法人税法上の課税の繰延べを行うための方法であるが、実務に広く普及していることから2級以上の範囲に追加した。ただし、2級では簡易なものに限るとし、その観点から2級では国庫補助金や工事負担金を受け取った場合における直接控除方式のみとし、いわゆる積立金方式は1級の範囲とするよう、括弧書きで示すこととした。

商工会議所簿記検定試験出題区分表の改定等について より

2級では簡易なものに限って出題されることになっているものの、実務で触れることのない方にとっては『圧縮記帳』と言われてもピンとこないかと思います。

「何を圧縮するの?」といったところから、圧縮記帳の趣旨や概要について、簡単に見ていくことにしましょう。
※日商簿記2級受験生向けの記事となりますので、1級で扱う内容は割愛いたします。あらかじめ、ご了承ください。

補助金をもらっても…

圧縮記帳の趣旨を考える上では、国から支払われる補助金(国庫補助金)をもらう例が分かりやすいため、このケースで考えてみましょう。

国はいろんな政策上の理由で、企業に対して補助金を交付する場合があります。
例えば、環境に優しい機械の導入を促したり、バリアフリーを推進するためにエレベータやスロープを設置する工事を促したりするために、必要な資金を企業に対して補助するケースが考えられます。

このような補助を行うことで、「今はお金がないから…」と思っている企業に対して投資を促し、間接的によりよい社会となることを目的にしています。

しかし、補助金が国から企業に支払われたときに問題となることがあります。
それが法人税法上の取り扱いです。

法人税法では、企業の儲け(課税所得)に対して法人税を支払うことを要請しています。
この法人税法の規定では、国からもらった補助金も収益(税法上の収益は「益金」と言いますが、話をシンプルにするために収益という表現のままにしておきます。費用や利益も同様です)となるため、補助金を貰うと儲けが増えて、支払うべき法人税も増えてしまうという矛盾が生じてしまいます。

仮に、国庫補助金が1,000万円支払われたとしましょう。税率が30%だとすると、せっかく1,000万円の補助を受けても、その年に300万円の税金を支払う必要が出てくるため、実際に使えるお金は700万円だけになってしまいます

国から支払われた補助金の一部が、すぐに税金として国に戻ってしまっては、何のために補助をして、何のために補助をしてもらったのか、双方にとって補助の意味が薄れてしまいます。 そこで登場するのが『圧縮記帳』です。

法人税法が定めた解決策『圧縮記帳』

国庫補助金を受け取った際に課題となる法人税法上の取扱いは、同じく法人税法が『圧縮記帳』という制度を用意することで、解決を図っています。

考え方はいたってシンプルかつ大胆で、ざっくりいうと「国庫補助金を受け取ったときの収益と同じ金額の費用を計上して、儲けを相殺してOK」というものです。

例えば、国庫補助金1,000万円を受け取って最新の省エネ対応機械4,000万円を購入したとしましょう。

国庫補助金1,000万円をもらった時点で『国庫補助金受贈益』という収益が1,000万円計上されます。
これを打ち消すために『固定資産圧縮損』という費用を1,000万円計上することで、収益と費用が相殺され、国庫補助金を受け取った時点での儲けを実質的にゼロにし、法人税の影響もゼロにすることができます。
一定の要件を満たせば、「こういう処理をしてOK」と法人税法が認めているのです。

ただ、仕訳は借方・貸方の金額を一致させなければなりません。
借方に『固定資産圧縮損』を1,000万円計上するためには、貸方にも1,000万円分記入しなければなりません。そこで記入するのが、固定資産の勘定科目(この場合は機械を購入しているので『機械』となります)です。

【圧縮時の仕訳】
固定資産圧縮損 1,000万円/機械 1,000万円

固定資産が貸方にくるということは、その分だけ買ったばかりの固定資産の金額が減ります。固定資産の取得原価が圧縮される様子から、『圧縮記帳』といいます。

なお、2級ではこういった処理しか出題されませんが、この処理では4,000万円で購入した機械の帳簿上の取得原価が3,000万円になるという不都合が生じてしまいます。
この不都合を避ける圧縮記帳の方法は、1級で学ぶこととなります。


圧縮記帳後のからくり

これまで見てきた4,000万円の機械と1,000万円の補助金の圧縮記帳の例を、引き続き考えてみましょう。
時が経って決算が訪れたら、この機械も減価償却を行うことになります。
仮に、この機械を耐用年数5年、残存価額ゼロの定額法で減価償却を行うとしましょう。

圧縮記帳を行うと、取得原価は3,000万円に圧縮されていますので、毎年の減価償却費は3,000万円÷5年=600万円となります。
この減価償却費の計算が、圧縮記帳のからくりを理解する上で非常に重要な意味を持ちます。

仮に圧縮記帳を行わなかった場合も考えましょう。
取得原価は4,000万円のままですから、毎年の減価償却費は4,000万円÷5年=800万円となり、圧縮記帳をした場合よりも多くなります。

減価償却費は費用ですから、多くなるほど利益が減って、支払う税金が減ります。
反対に、減価償却費が減ると費用も減るため、利益が増えて支払う税金も増えるという関係があります。

圧縮記帳をしなかった場合の毎年の減価償却費が800万円であるのに対し、圧縮記帳を行った場合の毎年の減価償却費が600万円です。圧縮記帳を行うと、圧縮記帳をしなかった場合と比べて毎年の減価償却費が減るため、支払う税金は増えてしまいます

ただ、耐用年数が到来するまでの期間のトータルで考えると、圧縮記帳の有無に関わらず費用の総額が同じであるため、期間トータルの利益に影響はなく、税率が一定であれば法人税の支払額も圧縮記帳の有無に関わらず同じ金額となります。

〇圧縮記帳を行わない場合
 ・減価償却費 800万円/年×5年=4,000万円

〇圧縮記帳を行った場合
 ・固定資産圧縮損 1,000万円
 ・減価償却費 600万円/年×5年=3,000万円

先ほどから見ている例で考えると、圧縮記帳を行うか否かに関わらず、最終的に5年間で計上する費用は4,000万円となっており、計上するタイミングだけが違うとみることができます。

圧縮記帳を行うと補助金をもらって固定資産を取得した時点での税金が少なくなるものの、その後の税金は減価償却費の関係で増えてしまうため、圧縮記帳は税金を免除される制度ではなく、単に“後回し”しているだけとも言えます。このような効果を、圧縮記帳による『課税の繰り延べ』といいます。

「繰り延べるくらいだったら、税金を払わないようにすればいいじゃないか。国のケチ!」と思う方がいらっしゃるかもしれません。
ただ、同じような機械を購入する企業の中には、補助金なしで頑張ってやりくりしている企業があるかもしれません。そのような企業と比べれば、補助金をもらった企業は優遇されている訳ですから、多く税金を支払って当然と考えることができます 。

圧縮記帳が認められる例

トータルで支払う税金の額が変わらないといえ、“後回し”にできるという特例が『圧縮記帳』ですから、企業が自由に使えるものではなく、認められる例は法人税法等で決まっています。
※法人税の試験ではないため、試験対策上は詳しい要件を知る必要はありません。また、実務では税理士さんなどにもよく相談した方が良いでしょう。

例として、以下のようなケースがあります。
  • 国庫補助金を受け取って固定資産を取得した場合
  • 工事負担金を受け取って固定資産を取得した場合
  • 火災で固定資産が滅失した後、受け取った保険金で固定資産を取得しなおす場合 など
圧縮記帳では金額の大きな固定資産の取得が関係することが多いため、実務では資金繰りなどへの影響も大きくなるのが一般的です。

圧縮記帳を行うケースに遭うことは多くないかもしれませんが、もしもそういった場面に遭遇した時に備えて、基本は理解しておいた方が良いでしょう。

なお、実際の企業がどれくらいの圧縮記帳を行っているのかについては、また別の機会の記事でご紹介したいと思います。 →記事:「八ッ場ダムと吾妻線と圧縮記帳」

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  • 製造元:
    ネットスクール株式会社
  • 定価:
    1,944円(税込)
  • ISBN:
    978-4-7810-1528-6

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