お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

「連結会計」ってそんなに重要なの?



第147回試験から『連結会計』が日商簿記2級の範囲に

平成28年度から平成30年度にかけて行われている日商簿記検定の出題区分改定ですが、その中で最もインパクトの大きい改定といえば、おそらく『連結会計』が日商簿記2級の範囲に加わることではないでしょうか。

これまで『連結会計』は日商簿記1級のみの範囲とされていましたが、1級の受験生の中でも苦手にされている方が多い内容であったため、その内容が(一部ですが)2級の範囲になるのは、かなり大きな影響が生じるものと考えられます。

どうしてこのような改定を行うことになったのかについて、日本商工会議所は「商工会議所簿記検定試験出題区分表の改定等について」(PDF)において、その趣旨を次のように説明しています。
連結会計は、従来すべて1級の出題範囲とされてきた。しかし、連結重視のディスクロージャーの制度は広く定着しており、親会社単体の個別財務諸表のディスクロージャーは簡素化の方向にすらある。また、いわゆる持株会社の解禁や、会社法においても連結計算書類の制度が導入されているほか、税法においても連結納税やいわゆるグループ法人税制など、企業集団を対象とした諸制度の整備が進んでいる。さらに、企業経営自体、グループ全体を視野に入れた経営判断を行う連結経営が加速しており、株式交換や会社分割、あるいは事業分離など組織再編が活発になっている。このようなグループ全体での経営管理のニーズは大企業のみならず中小企業においても顕著になっていくものと予想される。こうした実社会の潮流に適合するために、2級の段階でもある程度の連結会計について習熟しておくことが望ましいと判断し、2級以上の出題とした。
ただ、この文章だけを読んでも、受験生の方々にとっては、見慣れない単語も多くていまいちピンとこないかもしれません。

そこで、まずこの記事では、上記の改定趣旨を理解するために、実務で本当に連結会計の知識が必要なのか、確かめてみましょう。

連結重視のディスクロージャーとは?

前述の改定趣旨の文章の中を読むと、冒頭で2度登場するディスクロージャー(disclosure)という単語が目に付くのではないでしょうか。
まずはこの言葉と、それが「連結重視」とはどういうことなのかを確認していきましょう。

閉鎖や締切を意味する“closure”に否定を意味する“dis-”がくっついたこの単語は、『(情報などの)公開』や『開示』を意味する言葉です。

企業が自社の情報を投資家に対して開示することを『ディスクロージャー』といい、簿記で学習する財務諸表はディスクロージャーの中心となるものです。

では、これが「連結重視」になったとはどういうことでしょうか?

簿記で学習する財務諸表の基本は、1つの企業がその企業単独の財政状態や経営成績を利害関係者に伝えるために作成する財務諸表です。
日商簿記3級から学んできているのはこの財務諸表であり、1つの企業に対してそれぞれ個別に1つの財務諸表が作られることから、『個別財務諸表』といいます。

また、この個別財務諸表を作るための決算を特に『単体決算』といったり、単体決算の情報を『単体情報』といったり、「個別」の他に「単体」という言葉で表現することもあります。

それに対して『連結財務諸表』とは、親会社や子会社など資本関係や主従関係がある企業グループを1つの企業とみなし、この企業グループで1つの財務諸表を作ったものをいいます。

(詳しくは別の機会で触れますが)親会社が持っている資産と子会社が持っている資産は基本的にすべてまとめて連結貸借対照表に載せて、親会社の売上高と子会社の売上高も基本的にはすべてまとめて連結損益計算書に載せていきます。
例えば、親会社と子会社がそれぞれ保有している現金について、個別貸借対照表ではそれぞれの会社が保有している金額が、連結貸借対照表ではグループ内の企業が保有する現金をまとめた金額が計上されることになります。 ただし、例えば親会社が子会社に商品を販売した売上高は親会社の個別損益計算書には記載されますが、企業グループ内で商品が移動しただけですから連結損益計算書上は売上高として取り扱いません
※これを「売上高」に計上してしまうと、グループ内で商品売買を繰り返すだけで、売上高をいくらでも水増しできてしまいます…。
連結財務諸表にはそのような特徴があります。

以前は個別財務諸表を中心としたディスクロージャーが行われており、連結財務諸表は副次的な情報、いうなれば「おまけ的」な存在として扱われてきました。
しかし、(これも詳しくは別の記事でご紹介したいと思いますが…)個別財務諸表によるディスクロージャーの情報では不十分だったり、不都合が生じたり、場合によっては粉飾決算の温床になったりという理由のため、主に上場企業が作成する有価証券報告書では2000年3月決算から連結と個別の主従関係をひっくり返して、連結財務諸表が「主」個別財務諸表を「従」とすることになりました。

このように、連結財務諸表をメインとする開示のことを、「連結重視のディスクロージャー」というのです。


実際の開示資料を見てみよう

では、本当に連結財務諸表がメインになっているのか、実際に企業が開示しているデータを見てみましょう。
今回は、おそらく皆さんの生活にも身近なコンビニエンスストア「ローソン」でおなじみの株式会社ローソンのデータを見てみます。

有価証券報告書(有報)と決算短信

上場企業は、投資家をはじめとした利害関係者の判断の役に立てるため、財務諸表を中心に1年間の経営に関する様々な事象を記載した有価証券報告書(有報)を毎年提示しなければなりません。
この有報には通常、個別財務諸表と連結財務諸表の両方が記載されていますが、両方記載する場合には必ず連結財務諸表を先に記載することになっています。
実物はお時間があるときにご覧になってみて頂きたいのですが、目次を見ればその順番は明らかだと思います。
【連結財務諸表等】が先に来ていて、【財務諸表等】(「連結」と付かないのは個別財務諸表のことです)がその後になっています。

また、有報の冒頭は【主要な経営指標等の推移】という、過去5期間の売上高や純利益、自己資本比率など、投資家の人たちの多くが知りたがっているであろうデータをまとめて掲載している部分がありますが、こちらも連結財務諸表をベースにした企業グループのデータが先に記載されることになっています。

有報を見る投資家の人たちに対して、「まずは連結ベースの情報を提供します」というスタンスであることからも、現実世界で実際に連結重視のディスクロージャーが行われていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

加えて、有報とは別のものですが、有報が作成する前に上場企業が証券取引所のルールに従って開示する『決算短信』というものも、連結財務諸表があればそちらを先に掲載することになっており、決算短信も連結財務諸表をメインに据えた開示になっているといえるでしょう。

経済ニュースの数字

新聞やテレビなどで「当期は○○%の増益」や「一転赤字」など、企業の決算に関するニュースが報じられることがあります。 これらの元になるデータも、前述の有価証券報告書や決算短信であるため、基本的には連結財務諸表をベースとした数値であることがほとんどです

したがって、経済ニュースの情報を理解するのであれば、理想的には連結会計がどういったものかも押さえておいた方が良いといえます。

まとめ

ご覧頂いた例から、現在では連結会計によってもたらされる情報が重要なものとして扱われているこがお分かりいただけたのではないでしょうか。

もしかしたら、今お勤めの会社やこれからお勤めになる会社も、実はどこかの企業グループに属していたり、今後属することになったりするかもしれません。
そうなると、連結会計に関する知識は決して無関係なものとは言えなくなるでしょう。

また、直接関係なくても、財務諸表を使って取引先の経営状態などを分析する際には、それが連結財務諸表なのか個別財務諸表なのか、そして連結財務諸表がどのような仕組みで作られているのかは知っておくべきことになるかもしれません。

「連結会計は難しい…」などいろんな噂を耳にするかもしれませんが、学ぶことでビジネスシーンで役立つ知識が身に付くことは確かですので、ぜひこの機会に連結会計をしっかり学んで頂ければと思います。

このサイトでも、何回かに分けて連載企画的に、(不定期ですが)連結会計に関する記事を公開していく予定ですので、お楽しみに。

→次の記事:「持株会社」って何?~連結会計の必要性(1)~

日商2級商業簿記 新範囲攻略テキスト

  • 製造元:
    ネットスクール株式会社
  • 定価:
    1,944円(税込)
  • ISBN:
    978-4-7810-1528-6

OTHER ENTRY この記事を読んだ人がよく読んでいる記事

SERVICE 自社サービス