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「持株会社」って何?~連結会計の必要性(1)~

出題区分の改定趣旨にも登場する「持株会社」

前回の連結会計に関する記事の中で、日本商工会議所が公表した改定趣旨の文章もご紹介しました。

改めて前半部分を抜粋すると、
連結会計は、従来すべて1級の出題範囲とされてきた。しかし、連結重視のディスクロージャーの制度は広く定着しており、親会社単体の個別財務諸表のディスクロージャーは簡素化の方向にすらある。また、いわゆる持株会社の解禁や、会社法においても連結計算書類の制度が導入されているほか、(以下略)
とあり、その中で「連結重視のディスクロージャー」について、前回の記事で確認していきました。

ただ、もう1つ気になるワードとして、「持株会社の解禁」というフレーズが登場します。

持株会社」という文字の見た目から、きっと「株を持つ会社」なんだろうな…ということは推測することは容易だと思います。
事実、その通りといえばその通りなのですが、持株会社がどういった会社なのか、その持株会社の財務諸表がどうなっているのかを見ると、連結会計の必要性がはっきりと分かるのではないかと思います。

また、「解禁」とあることから、以前は「禁止」されていたんだということも推測できたのではないでしょうか。
今回は、この辺りの歴史的な流れと連結会計の必要性を探っていくことにしましょう。

持株会社ってどんな会社?

持株会社とは

持株会社とは、文字通り「株を持つ会社」ですが、もう少し踏み込んで説明すると、「他社を子会社にして支配するために株式を持つ会社」と考えて下さい。
子会社や関連会社となる会社の株式を大量に保有し、支配・従属関係をもとに企業グループ全体をコントロールすることを目的としている会社だといえます。

株式を“保有”することから、英語の“ホールディングス(Holdings)”という言葉を社名に入れるケースが一般的になっています。

持株会社の中には、自社も何かしらの一般的な事業(小売業や不動産業など)を営むケースもありますが、「純粋持株会社」と呼ばれる持株会社になると、一般的な事業はまったく営まず、子会社たちを管理・コントロールすることが持株会社の仕事となり、そこから得られる配当金収入が主な収益源となります

また、持株会社制をとる場合、子会社の株主に持株会社以外の株主がいるとコントロールしづらくなることから、多くの子会社を完全子会社(株式の100%を親会社が保有する)とし、持株会社だけが株式を株式市場に上場するという形が一般的になっています。

なお、持株会社自体はまったく新しいものではなく、第二次世界大戦前の日本に存在した“財閥”が純粋持株会社の形態をとっていましたが、財閥による支配が自由な競争を妨げ、日本経済の復興に悪い影響を及ぼすと考えたGHQが財閥解体を指示し、(一部の例外を除いて)持株会社の形態は禁止されることになりました。

しかし、諸外国の企業との競争力や経済対策の観点から、持株会社のメリットが見直され、平成9年(1997)年の法改正により、持株会社が解禁される形となりました。

持株会社のメリット・デメリット

普通のビジネスを行わず、単にグループ全体のマネジメントをするだけで1つの会社を作ってしまうのは、もしかしたら非合理的に思うかもしれません。
しかし、持株会社を作って企業グループを管理する形態には、主に次のようなメリットがあると言われています。
  • 意思決定がスピーディーかつ現場の実態に即したものになる
  • M&Aや組織再編が容易になる
  • 子会社各社が決算で財務諸表を作成するので、業績評価や責任の明確化が容易になる

ただし、もちろんデメリットも存在します。主なデメリットとしては
  • 子会社同士が協力せず、無駄なコストが発生したり、同士討ちしたりするおそれがある
  • 子会社の暴走や不祥事を発見しづらくなる
  • 親会社(持株会社)を意識しすぎた経営をしてしまう恐れがある
などが挙げられます。

そんなデメリットもあるものの、多くの企業は(特に上場企業を中心に)持株会社制のメリットが大きいと判断して、持株会社制に移行しているようです。

持株会社と連結財務諸表の必要性

実際の持株会社の財務諸表を見てみよう

前回の記事では、株式会社ローソンの財務諸表を実際の例として見てみました。

今回は、日商簿記検定の出題区分改定に関するページで案内役を務めているアイドルゲームのキャラクターたちにちなんで、株式会社バンダイナムコホールディングスの財務諸表を見てみましょう。
ちょうど、社名が「○○ホールディングス」となっていることからもある程度推測できるとおり、株式会社バンダイナムコホールディングス自体は純粋持株会社です。
ですから、持株会社の例としてピッタリです。

同社が公表している第12期(平成28年4月1日 ‐ 平成29年3月31日)の有価証券報告書を見てみることにしましょう。

個別財務諸表を見てみると…

まず、株式会社バンダイナムコホールディングスの個別財務諸表です。
個別貸借対照表を見ると、そこに計上されている総資産は354,697百万円(3,546億9,700万円)となっており、非常に大きな金額になっていることに驚かされます。

ですが、よく見てみると、土地や建物、現金などといった分かりやすい資産を持っているのではなく、総資産の約3分の2にあたる230,355百万円(2,303億5,500万円)が「関連会社株式」、すなわち子会社や関連会社の株式となっています。

また、個別損益計算書を見てみると、ゲームやおもちゃの売上高が計上されているのではなく、収益の大部分が『関係会社受取配当金』の21,151百万円(211億5,100万円)であることが分かります。
前述のとおり、持株会社の形態をとっている場合、多くが持株会社だけを上場しています。株式会社バンダイナムコホールディングスもこの例に漏れず、持株会社である株式会社バンダイナムコホールディングスだけが上場しており、具体的におもちゃやゲームを開発している子会社たちは上場していません(ほとんどが持株会社に100%株式を持たれている完全子会社となっています)。

では、皆さんが株式投資をしていて、日商簿記検定の改定ページにキャラクターが起用されるようなゲームを作っている会社に興味を持って、その会社の株式の購入を検討したとしましょう。
しかし、実際にそのゲームを作っている企業は上場しておらず、その親会社(持株会社)しか上場していないので、親会社の株式を買うことで、間接的にゲームを作っている子会社にも投資できるという形しかとることができません。

では、その前提で株式会社バンダイナムコホールディングスの財務諸表を見たとき、上記のような個別財務諸表だけしか見ることができなかったら、どう思うでしょうか? 本当に知りたいことは、おもちゃやゲームの売上やその開発・制作・運営にかかるコストやそこからの儲けであって、子会社から配当金をいくらもらったかではないはずです。

そこで重要になってくるのが、連結財務諸表という訳です。

連結財務諸表を見ると…

実際に株式会社バンダイナムコホールディングスの有価証券報告書でも、連結財務諸表を見れば、(グループ全体ですが)財産の状況や売上とコストの関係性などが見えてくるようになっています。 連結損益計算書に計上されている売上高620,061百万円(6,200億6,100万円)は、有価証券報告書内の販売実績にある「トイホビー事業」や「ネットワークエンターテインメント事業」などの販売高合計と一致していることから、実際にグループ全体で売り上げたおもちゃやゲームの金額であることが分かります

持株会社を理解するには、連結会計の知識が必要不可欠

子会社を持つことが一般的になった現代では、持株会社か否かに限らず、連結会計は非常に重要なものです。

しかし、株式会社バンダイナムコホールディングスの例でお分かりいただけたとおり、持株会社(特に純粋持株会社)では個別財務諸表の知識だけではなく連結財務諸表に関する知識がないと、企業の本当の姿が全くと言っていいほど分からない可能性があります。

冒頭で紹介した「持株会社の解禁」という部分からも、そうした時代背景を踏まえて、連結会計の知識を日商簿記1級だけでしか扱わない内容とするのではなく、日商簿記2級でも扱うべきだとする日本商工会議所の改定の趣旨がうかがえるのではないでしょうか。

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    ネットスクール出版
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