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31アイスクリームのキャンペーンで増えるアイスのからくり



31アイスクリームの気になるキャンペーン

夏になるとやっぱり恋しくなるのは、冷たいアイスクリームではないでしょうか。

ちなみに今日、7月3日は、1951年に明治神宮外苑で開かれた進駐軍主催のカーニバルの模擬店で、日本人に始めてコーンスタイルのソフトクリームが販売されたことにちなんで、日本ソフトクリーム協議会が制定した『ソフトクリームの日』だそうです。

という訳で、今回はアイスクリームに関するお話です。

スーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かけるアイスクリームもいいのですが、この時期にCMなどで気になるのは、サーティワンアイスクリームでおなじみの、B-R サーティワン アイスクーリーム株式会社(以下『サーティワン社』)のキャンペーンです。

そのキャンペーンは、期間限定で「ダブルの値段でトリプルに」というものです。
定期的に行われているようで、ご存知の方も多いかと思います。

ですが、どうしてこのキャンペーンは「ダブルの値段でトリプルに」というものなのでしょうか?
「シングルの値段でダブルに」というキャンペーンを見かけないのはなぜでしょうか?

せっかくなので、この記事ではサーティワン社の有価証券報告書(有報)と、日商簿記2級の工業簿記などで習う内容をもとに、キャンペーンのカラクリを原価計算の視点で探ってみましょう。

製造原価明細書を見てみよう

製造業を営む企業の有報では、販売したものの原価の内訳明細として「製造原価明細書」というものも作成・公表します(基本的には、簿記検定で学ぶ「製造原価報告書」と同じものと考えて下さい。)。

サーティワン社もアイスクリームを作っているので、言わば製造業でもあります。
そのため、サーティワン社の有報には製造原価明細書がしっかりと記載されています。

まず、同社の第44期(平成28年1月1日 ‐ 平成28年12月31日)の有報のうち、損益計算書を見てみましょう。
すると、製品の売上高が約151億円に対し、その原価(当期製品製造原価)は約95.8億円となっています。。
計算すると、原価率はおよそ63%となります。
もう少し分かりやすく置き換えると、100円のアイスクリームを製造するのに必要な原価が約63円ということです。
※「製品売上高」に対応する原価は、本来、「当期製品製造原価」ではなく「製品売上原価」と考えるべきですが、両者の金額に大きな差異がない点、製造原価明細書で内訳を確認していく点などを鑑みて、この記事では上記のように記述しています。

ただし、工業簿記を学んだことがある方はお分かりだと思いますが、ここでいう「原価」は「材料費」だけではありません
アイスクリームを作るためには、従業員の給料や設備の減価償却費なども必要です。こういった項目も、会計の世界では「原価」(製造原価)に含まれるのです。

業種によって分類が異なる場合もありますが、一般的には製造原価を次の3つに分類します。
1つが「モノ」を消費したことにより発生する「材料費」、もう1つが「ヒトの労働力」を消費したことにより発生する「労務費」、最後に「それ以外」の「経費」です。

このような製造原価の内訳を説明しているのが、先ほどから紹介している『製造原価明細書』なのです。 この『製造原価明細書』によれば、製造原価の内訳は材料費の構成比が78.2%労務費が9.6%経費が12.2%と書かれています。
100円のアイスクリームの原価が約63円という計算ですから、それぞれの構成比を掛け合わせると、材料費が約49.26円労務費が約6.05円経費が約7.69円となります。
ざっくりと図示すると、次のように表せます。


アイスの数を増やすとどうなる?

多少乱暴かもしれませんが、有報から分かるこれらの情報をもとに、無料増量キャンペーンを行った場合の原価をシミュレーションしてみましょう。

まず、値段はそのままで「ダブルをトリプルに」というキャンペーンです。

単純ですが、アイスクリームの量が2個から3個の1.5倍になる訳ですから材料費が1.5倍、すなわち材料費が50%増えると仮定して考えてみましょう。

すると、100円のアイスであれば材料費が約24.63円増えます。元の原価が63円ですから、単純計算で原価が87.6円まで増えます
それを100円で販売するのは、ギリギリ赤字になるかもしれません。
ですが、仮に赤字になるとしても、それほど赤字幅はそれほど大きくなく、お店に人を呼び込むための宣伝費と考えられる程度かもしれません。
※しつこいようですが、上記の数値は有報を元にかなり単純化したシミュレーションですので、あらかじめご了承ください。

では、もしも値段はそのままで「シングルをダブルに」というキャンペーンにするとどうでしょう。

単純に考えると、アイスクリームの量が1個から2個、すなわち2倍になるので、材料費も2倍になる計算です。
すると、100円のアイスクリームで換算すると、材料費が49.26円増える計算となります。
元の原価63円に加算すると、原価が112.26円になってしまいます。

アイスクリームを作るためのコストが販売価格を上回っており、更に店舗の家賃や広告費、店舗スタッフの人件費を払えば、赤字幅は更に広がってしまいます。
さすがにこれでは、キャンペーンをやればやるほど赤字になってしまうので、ビジネスとしては成り立たないでしょう。

ここまで見てきた検証は、有報だけを見て分かる情報をかなり単純化した仮定の下で計算したものです。
現実のコスト構造はもっと複雑であることは言うまでもありませんし、実際にサーティワン社がどのようにそろばんをはじいてキャンペーンの損得計算を行っているかは分かりません。
また、アイスの数が1.5倍になるか2倍になるのかの違いに気づけば、ここまでの計算は不要かもしれません。
ですが、外部の者でも有報の内容を見れば、理由の詳細の一端を垣間見れることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

ちょっと大変かもしれませんが、あなたもよく使う企業のキャンペーンの謎を有報で解き明かしてみませんか?

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  • 製造元:
    ネットスクール株式会社
  • 定価:
    1,944円(税込)
  • ISBN:
    978-4-7810-3219-1

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