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連結会計の考え方のキホン2(資本連結)



子会社を作ろう!

株式会社は株式を発行する代わりに株主となる人に出資をしてもらうことで、多くの人から出資を募って設立することができる会社形態ですが、1人(もしくは1社)が全額を出資して、発行する株式をすべて引き受けることも可能です。
そうやって株式会社を設立すると、株主総会の議決権はある1人(もしくは1社)がすべてを握ることになる訳ですから、基本的には完全にその人(またはその会社)の想いのままに操れることになります。

例えば、ある会社が新しい別会社を設立させ1,000万円を出資し、すべての株式を引き受けた(取得した)としましょう。 100%の株式を持っている(持たれている)という関係ですから、出資した側の会社は親会社、出資を受けた新しい会社は子会社となります。

話をシンプルにするために、以下のように仮定します。
親会社の貸借対照表は子会社株式という資産が1,000万円と資本金が1,000万円だけ、子会社の貸借対照表は出資を受けて払い込まれた現金(資産)が1,000万円と資本金が1,000万円だとします。

この状態で連結財務諸表を作るとどうなるでしょうか?
以前の記事でも紹介したとおり、連結決算のスタートは親会社と子会社の財務諸表の項目と金額を単純に合計することですから、資産は現金1,000万円と子会社株式1,000万円、それに資本金が2,000万円ということになります。

ただ、このままではおかしな連結貸借対照表となります。
なぜなら、企業グループを1つの企業とみなして考える連結会計では、親会社が子会社に出資する取引も「単に企業内の現金の場所が変わっただけ」と考えられるので、この取引は無かったものと考えなければなりません。
従って、この取引の結果増えた子会社の資本金1,000万円と、親会社が取得した子会社株式1,000万円を取り消さなければなりません
そこで、以下のような連結修正仕訳を行うこととなります。

【連結修正仕訳】
 (借) 資本金 1,000万円  (貸)子会社株式 1,000万円

この手続きを、投資と資本の相殺消去ということもあります。

投資と資本の相殺消去では、親会社の投資(すなわち、子会社株式)の項目と、子会社の資本(≒株主資本。正確にはそれ以外も含まれますが、イメージを理解するには、まずはこの考え方の方が良いと思います)の項目を連結修正仕訳で消していきます。

既に存在している会社を子会社にしよう!

先ほどの例では、新たに子会社を設立する場合を見ました。
この場合、親会社の投資額(子会社株式の金額)と子会社の資本の額が等しいため、お互いに消しあえば問題ありませんでした。

ですが、既に存在している株式会社の株式を買い占めて子会社にする場合、このように上手くいかないケースがあります(基本的に上手く相殺できません)。

子会社株式を高く買う場合

例えば、資本金が3,000万円利益剰余金が1,000万円あるS社の株式すべてを買おうとするケースを考えてみましょう。

資本金も利益剰余金も株主資本ですから、株主になるとその資本は買い手である当社のものとなります。
従って、株主資本が4,000万円の会社の株式を100%買い占めるのであればば、当社のものとなる株主資本の4,000万円で足りそうですが、なかなかそのとおりにはいきません。

既に存在している株式会社の株式を買い占めるのであれば、現時点での株主から株式を買い取るですが、通常、現時点の株主は「将来の利益」への期待も込めて株式を保有している訳です。
そのため、その会社の株式を手放すということは、株主資本だけでなく「将来の利益」も手放すことになる訳ですから、売却時には株主資本以上の金額を要求するのが一般的です。

また、多くの会社には、それまで築いた取引関係やノウハウ、人的関係やブランド力(りょく)といった目に見えない財産があるはずです。
しかし、そうした目に見えない財産はS社の貸借対照表に資産として計上されていないため、それも加味すると、S社の価値は通常、貸借対照表に計上されている株主資本よりも大きくなるはずです。

すると、株主資本が4,000万円のS社の株式のすべてを買い占めようとすると、それ以上の金額、例えば4,500万円といった金額で買い占める必要が出てくる訳です。

こうなると、投資(子会社株式)の額と資本(子会社の資本)の額が異なるので、冒頭で見たように単純に相殺消去できなくなります

このときに登場する科目が、「のれん」という資産です。

子会社の株主資本4,000万円に対して、4,500万円を投資するケースでは、差額の500万円は子会社の将来の利益や目に見えない財産に対して支払われていると考えることができます。
この500万円を新たな資産の取得と考え、「のれん」という資産として、投資と資本の相殺消去の際に計上することになります。

連結修正仕訳を示すと、下記のようになります。
【連結修正仕訳】
 (借) 資本金   3,000万円  (貸)子会社株式 4,500万円
   利益剰余金 1,000万円
   のれん    500万円


連結修正仕訳で計上されたのれんは、合併などで計上されたのれんと同じく、20年以内の年数で償却(費用化)していくことになります。
ただし、連結修正仕訳で計上されたのれんは個別財務諸表には載らず、連結財務諸表にしか載ってこないものなので、のれんの償却も連結修正仕訳となる点に注意が必要です

例えば、上記の500万円ののれんを償却する連結修正仕訳(20年の定額法で償却と仮定)を示すと、次のようになります。

【連結修正仕訳】 
 (借) のれん償却  25万円  (貸) のれん  25万円




子会社株式を安く買う場合

先ほど説明したとおりの理由により、会社の株式を買い占めて子会社とする場合には、子会社となる会社の貸借対照表に載っている株主資本よりも高い金額を必要とする場合が多いため、「のれん」が計上されるケースがほとんどです。

ですが、これとは反対に、子会社株式を安く買えてしまうケースもあります。

1つの例としては、ある親会社が赤字続きの子会社と縁を切るために、二束三文で株式を売りに出すケースが考えられます。

このまま持ち続けて子会社が倒産すれば、元の親会社が持っている子会社株式の価値はゼロになってしまいます。
それを避けるためであれば、まだ値が付くうちに、安くてもいいので他社に買い取ってもらおうと考えるのです。

このような赤字続きの子会社の中には、単に元の親会社との相性や親会社の経営方針が悪かったがために赤字が続いていることもあり、こういった場合には、新しい親会社となる買い手の企業が、自分たちの傘下に入れて新たな体制や方針に生まれ変わらせることで、黒字企業に変貌するかもしれません。

二束三文の安い金額で売り出されている会社の中から、こういったダイヤの原石になりそうな会社の株式を買い占めて子会社とする場合に、先ほどとは逆で子会社株式を安く買えるケースが生じることがあります。

例えば、先ほどと同じく、資本金が3,000万円利益剰余金が1,000万円あるS社の株式すべてを買おうとするケースを考えてみましょう。

今度は、このS社が赤字続きなので、元の親会社がとにかく早く買い手を見つけて、自分の元から手放したいという意図から、「2,500万円ですべての株式を売りたい」と申し出たとしましょう。

すると、今度も投資(子会社株式)の額と資本(子会社の資本)の額が異なるので、冒頭で見たように単純に相殺消去できなくなります。
また、先ほどの高く買う例と異なり、相殺消去の仕訳の貸方側に1,500万円の生じてしまいます。

このとき生じる貸方側の差額1,500万円は、「負ののれん発生益」という収益(特別利益)として処理するため、連結修正仕訳としては、次のようになります。

【連結修正仕訳】
 (借) 資本金   3,000万円  (貸)子会社株式    2,500万円
   利益剰余金 1,000万円     負ののれん発生益 1,500万円


では、なぜ「のれん」は資産になるのに、逆のケースでは「負ののれん」のような負債にせずに、「負ののれん発生益」という収益にするのでしょうか?

実は、以前は「のれん」が資産であることから、その逆のケースで生じる差額は「負ののれん」という負債としていました。

しかし、よく考えてみると、「のれん」は将来期待できる利益だったり、ノウハウやブランド力といった目に見えない財産だったりの分だけ高く支払われたものですから資産としての価値はあるものの、「負ののれん」には負債として誰かに何かを支払わなければならないという義務はありません
そうしたことから、現在では、「のれん」は資産に、その逆は単純にバーゲンのような状態で子会社株式を買えて得した(ラッキーだった)という考え方のもと、「負ののれん発生益」という収益(特別利益)して処理されることとなりました。

基本を大切に

今回の記事では、子会社となる会社の株式を100%すべて買い占めたという、最もシンプルなケースで、投資と資本の相殺消去と、そこから生じるのれんを中心に見てきました。

実際には、試験でも実務でも、もっと複雑なケースに遭遇するのが一般的ですから、ここで紹介した処理がそのまま使えることは、滅多にないと言ってよいでしょう。

ただ、今回見た考え方が、資本連結の基本ですし、のれんの意味を考える上でのベースとなるはずです。 より複雑な連結会計の学習に入る前の、基礎段階の読み物としてお役に立てれば光栄です。

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