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第187回全経簿記上級の「合格率」と「採点講評」



第187回全経簿記能力検定 上級試験 受験者データ発表

2017年7月9日に実施された第187回全経簿記能力検定試験の上級試験の受験者データが、9月8日に主催者である全国経理教育協会(全経協会)のホームページにて発表されました。

気になるデータは以下のとおりです。
  • 受験申込者数:2,236
  • 実受験者数:1,920
  • 合格者数:305
  • 合格率:15.89


『採点終了にあたって』の気になるところ

全経簿記能力検定試験の上級試験は、合格率等の受験者データが発表されるのとほぼ同じタイミングで、『採点終了にあたって』という採点者もしくは出題者側の講評に相当する文書もホームページで公表されることになっています。

第187回試験の『採点終了にあたって』も、受験者データの発表と同じ2017年9月8日に全経協会のホームページで公開されています。

受験者全体の正答率や解答状況、個別問題の留意点や出題の意図、受験生に要求することなどが主催者側の視点で書かれている(唯一といっていい)文書です。
今回の第187回試験を受験した方はもちろんですが、次回以降の上級試験を受験予定の方も、また、日商簿記1級を受験予定の方もどのようなことに気を付けるべきなのかを知る目的で、ぜひ一読しておきましょう。

今回は、その中から今後の試験にも関係しそうな内容をピックアップしていきたいと思います。

勘定記入について

商業簿記の問題1・問3の解答状況について、以下のような記述があります。

問3は、繰越利益剰余金勘定とその他資本剰余金勘定への転記に関する問題ですが、転記の場合には、相手勘定(「繰越利益剰余金」や「損益」を記入しなければならないのに、摘要の記述のような表現、例えば、「剰余金処分」や「当期純利益」という表現を使用している解答例(もちろん、誤答です。)がありました。これは簿記の初歩ですから、忘れないようにして下さい。

簿記検定では、級が上がるにつれて個々の処理や計算が複雑になる一方、帳簿記入に関する問題の出題頻度が下がるため、どうしても帳簿記入に関する知識がおろそかになりがちです。
おそらく、日商簿記1級を学習されてきた方は、その傾向が強いものと思われます。

ですが、全経簿記上級試験では、頻繁に勘定記入に関する問題が出題されています。
特に指示がない限り、原則として総勘定元帳では仕訳の相手勘定を記入する(相手勘定が複数の場合には「諸口」となる)というルールは、最低限押さえておかなければ、せっかく正しい金額が計算できて、仕訳が分かっていても、不正解扱いされる可能性があります。

これはもったいないので、もし全経簿記上級試験をこの後受験予定の方は、適宜、勘定記入や帳簿記入のルールを確認するようにすることをお勧めします。

会計学の問題1で記入する『理由』について

全経簿記上級試験の会計学・問題1では、会計理論・会計基準に関する文章の正誤判定問題が10題出題されます。
この10題のうち、問題文の文章が誤っていると判断される場合には、その理由も併せて解答しなければならないことになっていますが、そのことについて、以下のように指摘されています。

特に、問題文の最後を否定形にし「・・・・ではない。」という理由を書いている解答は、正答ではないので、注意してください。また、不正確な表現(「・・・以内の」が「・・・内の」や「期間」が「年数」など)や「説明しなさい」と指示しているのに、文章になっていないケースもあり、これらは減点の対象としています。また、「×」とした理由の正しい指摘をしているのに、誤った内容がそれに付加されている場合、その誤りの程度によっては、誤答とせざるをえないものもありました。

誤っている文章に対する理由をどのように書けばよいのか、迷ってしまう受験生の方もいらっしゃることと思います。
基本的にはお手持ちの過去問題集などを参考にして頂ければ良いのですが、迷ったときに参考になる指針がいくつか示されているのが、今回の文章の大きな特徴かもしれません。

まず、文末を否定形に入れ替えただけの文章や、そもそも文章になっていない解答については、「減点の対象」とすることが明示されています。
ただ、あくまでも「減点の対象」であり、誤答とはしないようなので、本当に困ったときも、何も書かないよりはマシということかもしれません。

また、誤った内容を書き足した場合、程度によっては誤答扱いとなるとも明示されていますので、理由を記入する際には、余計なことが書かれていないか、よく確認した方が良さそうです。

工業簿記の学習について

全経簿記上級試験の工業簿記では、工業簿記の一連の流れに沿った問題が出題されるケースが多々あります。
今回の第187回の試験でも同様の問題が出題されましたが、苦手にしている受験生が多かったようで、以下のように指摘されています。

この状況をふまえて、これから受験生にお願いしたい点としては、次の三つです。第1は、工業簿記のプロセスに注意を払うようにして欲しいという点です。多くの受験生は、材料費の計算、労務費の計算、製造間接費の計算、個別原価計算にもとづいた完成品原価の計算というように、それぞれのトピックについて学習していると思います。しかし、工業簿記は一連のプロセスですから、トピックごとの内容ではなく、トピック間の関連性も意識して学習を進めて欲しいです。(以下略)

このようなお願いがされる原因として、今回の試験を受験された方の傾向として、以下のような弱点が理由としてあるようです。

第1に、さまざまな資料にもとづいて勘定を作成するという問題に不慣れな受験生が相当数存在するという点です。例えば、問3や問5では、材料費や労務費に関連する資料を事前に整理し、これをもとに材料勘定や賃金・給料勘定を作成する、というステップを経ることが必要です。しかし、事前の整理を経ずに、材料勘定や賃金・給料勘定の作成に取り組んでいる受験生が、かなりの数で見られました。

工業簿記も、級が上がるにつれて個々の計算が複雑になるためか、トピックごとの学習に意識が払われがちになり、結果として、工業簿記の初歩で学んだ一連の流れの確認がおろそかになってしまう傾向があります。

特定のトピックに焦点を絞って出題される問題(日商簿記1級の工業簿記ではこちらの方が多いですね)であれば、特定のトピックに絞った学習に重点を置いても問題ないのですが、一連の流れを問う問題の出題頻度が高い全経簿記上級の工業簿記では、指摘されているように、トピック間の関連性も意識して学習すべきといえるでしょう。

答案の文字について

前回の第185回のときも同様の指摘がされていましたが、今回も答案用紙の文字が不明瞭である旨が、至る所で指摘されています。 例えば、原価計算については以下の文章で締めくくられています。

また、毎回採点講評で指摘するのですが、文字が小さい・薄い・汚い解答も少なからずありました。1と7、4と9など、判別しにくい数字を書いている解答が少なからずありました。数字くらい普通に読める字で書いてほしいものです。

数字くらい普通に読める字で書いてほしいものです」という部分から、かなり読みづらい答案が相当数あった可能性がうかがえます。 また、商業簿記の採点講評では、

最後に、問題1と問題2に共通している点として、これまで何度も注意しているところですが、数字が不明確で判別できない解答がまだありました。正答であるかもしれないのに、誤答として扱うしかありませんでしたので、残念でした。

と、不明確な数字では誤答になる可能性も指摘されています。
乱雑に書いた結果、「0」と書いたつもりであっても、多くの人が「6」と読めるものになっていれば、それを前提に採点されることになります。

決して「きれいな文字」でなくてもよいので、「丁寧な文字」を書くように心がけましょう。

また、会計学では用語の誤字についても指摘されています。

(中略)誤字脱字が多いことに驚いています。例えば、「簿記」が「薄記」、「状態」が「状能」などです。また、「正規の簿記の原則」の原則となっていたり、「流動性配列法」が「流動性配列」や「流動配列法」、「繰延資産」が「繰越資産」となっていたりと、不完全な表現が用いられていました。

誤りやすい漢字についてはこちらの記事にもご紹介していますが、理論問題で用語を答えたり、文章を書いたりする機会が多い全経簿記上級試験では、他の試験よりも誤字の影響が大きくなる可能性もあります。
学習にあたっては、計算や仕訳ばかりではなく、正しい漢字も押さえておくよう心がけましょう。

平成30年度税理士試験を目指す方へ

全経簿記上級試験を受験される方の中には、税理士試験の受験資格の取得を目的とする方も多いことかと思います。

今回、見事合格された方は税理士の受験資格を取得できた訳ですから、税理士試験が目標の方は、ぜひとも早めに税理士試験の学習を始めましょう。

8月に試験が終わったばかりの税理士試験対策講座は、その翌月である9月から来年の試験に向けた講座が開講するのが一般的です。
このタイミングであれば、ほとんど差がない状態で来年度の試験に向けた税理士試験対策講座に合流できるはず。
また、全経簿記上級試験は日商簿記1級に比べて理論問題の比重が大きいため、財務諸表論の学習においてもアドバンテージになるはずです。ただ、そのアドバンテージも、時間が経つにつれて少なくなるはずですから、来年度の税理士試験合格を目指す方は、ぜひとも早めに税理士試験対策に移るようにしましょう。



なお、合格された方は、後日『合格証書』を受け取ることと思いますが、この『合格証書』では、税理士試験の受験資格の証明にはなりません
税理士の受験資格を証明するには、別途、『合格証明書』が必要となります。合格証書との違いや請求方法については、以下の記事にまとめてありますので、よく確認しておきましょう。
簿記検定の「合格証書」と「合格証明書」

必要になるのは来年5月の受験申込み時期ですから、まだ当分先の話ではありますが、いきなり慌てないように注意しておきましょう。

お知らせ

ネットスクールでは、全経簿記上級試験のほか、日商簿記1級や税理士試験対策のWEB講座を開講中です。
合格発表後に次の試験に向けての学習方法をご検討中の方は、ぜひともネットスクールのWEB講座もご検討下さい。

詳細はネットスクールホームページをご覧下さい。

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