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どうして会計上と税務上で差異が生じるの?



これまで日商簿記1級の学習内容であったものの、平成30年度から日商簿記2級の範囲として出題されることになった『税効果会計』。

税効果会計については色んな説明ができるものの、日本商工会議所の資料を引用して説明すれば“会計上の利益計算と税務上の所得計算との間で生じた一時的な差異を調整するための会計上の手続き”となります。

でも、この文章を読んだ人の大半はこのように思うでしょう。
「会計上の利益計算と税務上の所得計算との間で差異が生じるってどういうこと?」
この事実に納得できないと、税効果会計の納得できないかもしれません。
そこで今回は、税効果会計の前提として会計上の利益計算と税務上の所得計算との間の違いについて考えてみましょう。

会計上の利益計算

会計上の利益計算とは、多くの方が簿記や会計のテキスト・授業で学んだ「収益-費用=利益」のことだと考えて頂ければ大丈夫です。

ただ、会計上の利益計算では「企業の経済的実態に合わせること」が重視されます。

特に、会社の規模が大きくなったり、はたまた上場したりすると、企業の決算の数字が社会に大きな影響を与えるようになるため、会計で計算される利益が企業の実態を適切に表しているものかということが大きな意味を持つようになります。
簿記検定で級が上がるにつれて、会計処理の種類が増えたり複雑になったりするのは、様々な場面でより実態に合った利益計算を行うためだというのも1つの理由だといえます。

税務上の所得計算

税務上の所得計算とは、(主に企業の)儲けに対して課される法人税等を計算するための計算で、先ほど見た会計上の「収益-費用=利益」に対応するものだと考えて下さい。

ですが、税務上では「収益」に相当するものは「益金(えききん)」、「費用」に相当するものは「損金(そんきん)」、「利益」に相当するものは「所得」と呼ぶことになっています。

多くは、会計上で計上された収益や費用がそのまま益金や損金になるのですが、必ずしも全てが一致する訳ではありません

会計上の利益計算が「経済的な実態に合っているか」を重視するのに対し、税務上の所得計算は「課税の公平性」を重視するため、会計上の収益・費用とは異なる考え方をするものがあります。

いくつか例を挙げてみましょう。

会計と税務で考え方が異なる例

(1) 罰金や反則金

簿記検定ではあまり見かけませんが、企業も何かしらの法令違反により罰金を支払うことになったり、行政から反則金を支払うように命じられたりすることがあります。

もしも、このような罰金や反則金を支払うことになった場合、会計上は費用(もちろん、めったにある訳ではないので特別損失)に計上し、その分だけ利益が減ることになります。

しかし、税務上の所得計算ではそのまま損金になる訳ではありません。

もしも、これらの罰金や反則金が「会計上の費用だから」といって税務上でも損金として認めてしまうと、その分だけ所得(税務上の儲け)も減って、結果的に法人税の額も減少します

罰金や反則金を支払うというのは、社会的に好ましくないことを起こしたことに対しての制裁です。
それにもかかわらず、罰金を支払うことで税金が安く済むということになれば制裁的な効果が薄れてしまいます

そのため罰金や反則金といったものは、会計上は費用となるものの、税務上は損金として認められず、会計上の利益計算と税務上の所得計算との間に生じる差異の一因となります

(2) 減価償却の耐用年数

会計の世界では、計算される利益が実態に合うようにするため、減価償却の耐用年数も実際に使用する(と見込まれる)年数で計算するべきだと考えます。

したがって、一般的には10年使える機械であっても、「こんな機械を10年も使っていたら技術進歩に置いていかれるから、3年で取り替えるぞ!」と考えている企業であれば、この機械の減価償却は耐用年数3年で計算すべきと考えます。

ですが、耐用年数を短くすると1年当たりの減価償却費が大きくなり、結果として利益も小さくなります。
果たしてこのような計算を税務上の所得計算にも持ち込むと、どのようになるでしょうか。

費用が大きくなって利益が小さくなるということは、単純に考えれば法人税の額は少なくなります

もしも減価償却の耐用年数を短くして利益を小さくすることで、法人税の金額がそのとおり少なくなるのであれば、どうなるでしょうか。
どうせ将来のことは誰にも分からないですから、本当は10年以上使うつもりの固定資産でも、「2年間しか使わないつもりで買いました」という体で減価償却をしてしまえば、その2年間の税金を安く済ませることができてしまいます

その2年間が過ぎてもまだ使い続ける場合、今度は減価償却費がゼロになって税金が多くなってしまうため、そこまで考えるとトータルのプラスマイナスはゼロになるはずですが、こんなことが認められると、同じような固定資産を使っている企業間で税金の額がちぐはぐになってしまいます

そのため、税法では固定資産の種類や用途に応じて「法定耐用年数」というものが決められており、(細かく見ると正確ではありませんがイメージとして)税務上はそれに基づいて計算された減価償却費に基づいて、税金を決める所得計算を行うことになっています

その結果、耐用年数の違いにより会計上の利益計算と税務上の所得計算で減価償却費が異なるという事態が生じることになります

(3) 引当金

簿記検定の決算整理などでおなじみの「引当金」。
正しい費用を計上するため、会計上はなくてはならない存在です。

ですが、税務上では貸倒引当金など一部の引当金を除いたほとんどすべての引当金の存在が認められていません
したがって、会計上で「○○引当金繰入」という費用を計上しても、税務上では損金と認められない場合がほとんどです

例えば、本来は当期に行うべきだった修繕を翌期に延ばしたことにより計上する「修繕引当金」で考えてみましょう。
会計上では修繕引当金の相手勘定である「修繕引当金繰入」という費用が引当金設定時に計上されますが、税務上ではこの費用は損金として認められないため、その分、税務上の所得は大きくなって、支払う税額も大きくなってしまいます
このときも税務上の利益計算と税務上の所得計算との間に差異が生じます。

ですが、これは「たくさん税金を取ってやろう」という趣旨ではなく、あくまでも公平に税金を徴収するためのものです。
引当金を計上するだけで税金が安くなるのなら、引当金を使って税金を安く抑えようと考える企業がそこら中に表れるでしょう。中には、行うもりのない修繕の引当金をでっち上げて、脱税に近い形で引当金を悪用する企業が表れる可能性も十分に考えられます

そのため、税務上では引当金の繰入だけではほとんどの場合で損金として認めない代わりに、実際に引当金を取り崩すような事実(修繕引当金であれば実際に修繕を行うこと)が起きたタイミングで損金として認めるような制度になっています。

税効果会計に繋がるのは…

先ほど見た、会計上の利益計算と税務上の所得計算との間に差異が生じる3つの例のうち、「(1)罰金と反則金」は、差異がなくなることはありません
会計上は費用、税務上は損金にならないという関係は永遠に変わりません

一方、「(2)減価償却の耐用年数」はある一定期の期間が過ぎたり固定資産を売却したりした時点で、「(3)引当金」は引当金を取り崩すような事実があった時点で、会計上の費用の総額と税務上の損金の総額が一致し、長い目で見ると会計上と税務上の差異がなくなります
したがって、こちらの会計上と税務上の差というのは、一時的なタイミングの問題ということになります。

そこで、改めて冒頭にご紹介した、税効果会計とは何かを説明した文章を見直してみましょう。
“会計上の利益計算と税務上の所得計算との間で生じた一時的な差異を調整するための会計上の手続き”
一時的』というところから分かるとおり、この記事で紹介した事例のうち「(2)減価償却の耐用年数」と「(3)引当金」のような事例が税効果会計に繋がり、「(1)罰金と反則金」のように差異が永遠になくならない事例については税効果会計とは関係ないということが、なんとなくでもお分かりいただけるのではないでしょうか。

ちなみに、前述のとおり、大企業や上場企業など利害関係者が多ければ多いほど、会計上の利益計算が「より実態に合うように」ということが求められます。

一方の中小企業では、利益計算の結果が社会に与える影響が大企業に比べると小さいですし、そもそも経理に携わる人員の数にも違いがあり、あまり複雑なことはできないのが一般的です。
そのため、中小企業では「税務上の所得計算をそのまま会計上の利益計算にも応用する」ことが頻繁に行われるため、会計上の利益計算と税務上の所得計算との間で生じる差異が小さくなることが通常です。
したがって、税効果会計が登場するのは主に大企業や上場企業であることも、せっかくなので知っておくと良いかと思います。

詳しい税効果会計の処理については、またどこかの機会で記事にしたいと思いますが、税効果会計が必要となる状況について、理解の参考になれば幸いです。

日商簿記2級に“とおる”テキスト 商業簿記

  • 製造元:
    ネットスクール出版
  • 定価:
    2,160円(税込)
  • ISBN:
    978-4-7810-3217-7

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