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経営事項審査の改正に伴う建設業経理士への影響



2021年3月26日に公布された国土交通省告示第246号にて、2021年(令和3年)4月1日から改正となる経営事項審査制度の詳細が明らかになりました。

今回の改正では、建設業経理士の資格と経営事項審査の関係に大きな変更が加えられたので、これから建設業経理士を受験される方はもちろんのこと、既に建設業経理士の資格をお持ちの方にとっても大きな影響があります。

この記事では、建設業経理士の試験に関係する部分を中心に、今回の改正の内容について解説していきます。

登録経理講習の法制化

従来は建設業経理士の合格者に対して、合格後の継続教育や研鑽を目的とした講習は法制化されていませんでした。

建設業経理士試験の主催団体である一般財団法人建設業振興基金が、同じような目的で建設業経理士1級・2級合格者に対して『登録講習会』を開催していましたが、受講は任意でした。

今回の改正で新たに法制化された『登録経理講習』も、受講が義務付けられている訳ではありませんが、後述のとおり、経営事項審査における加点評価の対象となるためには受講が必須となるため、建設業にお勤めの方などにとっては、事実上、受講が義務化されるような格好となります。

経営事項審査における加点評価対象者の変更

改正の概要と意図

これまでは登録講習会の受講の有無にかかわらず、建設業経理士試験1級もしくは2級に合格すれば、「1級建設業経理士」もしくは「2級建設業経理士」として、勤務先の経営事項審査の加点評価対象となっていました。

しかし、今回の改正からは、原則として前述の登録経理講習を受講しなければ、加点評価されないこととなりました。

この背景には、以前と比べて会計基準などの変更の頻度が増えたことと、建設業経理士と同じく経営事項審査における加点評価となる税理士・公認会計士の制度との整合性という観点が考えられます。

例えば、今回の経営事項審査の改正と同じタイミングの2021年4月から、上場企業を中心に『収益認識に関する会計基準』という新たな会計基準が適用されるようになり、この影響で建設業の会計処理、特に工事収益の計上に関する理論的な考え方が大きく変化しました。
しかし、こうした新しい会計基準を合格した後に学習するインセンティブはこれまでの制度にはなく、登録講習会などの自発的な学習を期待するだけでした。

また、建設業経理士と並んで経営事項審査の加点評価対象となっていた税理士や公認会計士は、それぞれ税理士法や公認会計士法で継続的な研修による新しい制度や知識の学習が義務付けられているのに対し、建設業経理士はその制度がこれまでなかったことによるアンバランスを解消するための改正が、今回の改正の趣旨といえます。

加点評価対象者(移行期間に伴う特例を含む)

上記のような背景から、今回の改正が加えられたと考えられますが、過去に合格した人を含め、すべての人に登録講習を義務付けるのは、現実的ではありません。

そこで、移行期間に伴う特例を含め、登録講習を受けていなくても加点評価の対象となるケースがあります。 ご自身が該当するか否か確認しておきましょう。
  1. 登録経理試験の合格者で、合格した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して5年を経過しない
  2. 登録経理講習の受講者で、受講した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して5年を経過しない
  3. 令和5年(2023年)3月31日までに限り、平成29年(2017年)3月31日以前の登録経理試験の合格者
  4. 建設業振興基金が実施した『登録講習会』の受講者で、受講した日の属する年度の翌年度の開始の日から起算して5年を経過しない

文章だけを見るとややこしく感じるかもしれませんが、多少の誤解を恐れずにシンプルな表現でまとめると、「5年を超えない範囲で知識をアップデートしなさい」というのが、今回の改正の本質といえるのではないかと思います。

5年以内に試験に合格するか、登録講習を受講すれば、それで知識をアップデートしたことが明らかです。

ただし、いきなりこの制度を厳密に運用すると、誰も加点対象とならない恐れがありますから、移行期間の特例として、2017年度以前に合格していた人も5年を超えない範囲の2023年度末まで、(本来は『登録経理講習』とは別の講習制度ですが)これまで行われていた『登録講習会』を受講していた人にも受講から5年間は加点対象となるような措置が取られているのです。

なお、ルール上は「同じ級の試験を再度試験して合格すればOK」とも読み取れますが、5年に1度、合格できるかどうか分からない試験のために学習をして検定試験を受けるというのは、非常に面倒で、かつハイリスクな方法だと思います。

詳細はまだ決まっていないようですが、過去に建設業経理検定に合格された方にとっては、登録経理講習を受講されるという手段が、経営事項審査の観点評価対象でい続ける最も手堅い方法になるものと思われます。

また、「講習を受けないと加点対象にならない」と思って受験自体を敬遠する方も現れるかもしれませんが、企業の担当者からすれば、経営事項審査の加点評価対象を増やしたいと考えたときに、「検定試験の合格から目指さないといけない人」と「すでに合格していて、登録経理講習さえ受講すればよい人」では、どちらの方が価値が高いかは一目瞭然なはずです。
一見すると価値が下がるように思うかもしれませんが、総合的に考えると、建設業経理士の合格者の価値は今までとさほど変わらないのではないでしょうか。

今後の動きについて

改正にあたって、経営事項審査においてどのような配点になるのか、具体的な配点は2021年3月末時点でまだ決まっていないようです(ただし、これまでと同様の配点となる見込みのようです)。

また、登録経理講習の実施団体についても、実施団体が国土交通省に申請をする必要がありますが、まだ具体的な実施団体は決まっていません。
ですが、これまでの“登録講習会”を実施していた建設業振興基金も登録経理講習の実施団体となるように申請する予定とのことです。

最後に

真相は明らかではありませんが、今回の制度改正に関しては、2019年のこちらの記事でもご紹介したMstrong>「建設業経理検定制度に関する提言書」を取りまとめるにあたって議論された内容などの影響も受けているのではないかと思われます。

建設業に限らず、経済を取り巻く環境が大きく変わっていく中で、試験制度や資格の意義についてもその時代に合わせて変化していくことは、ある程度不可避なのかもしれません。

今回の改正に関しては、受験生(というよりもむしろすでに合格した方)に負担を強いるものであることに変わりはありませんが、建設業経理士として社会が期待する役割を果たすためには必要だったのかもしれません。

変化が大きい時期は負担も大きくなりますが、それだけ社会の期待も大きく、合格した後の価値は上がるかもしれませんので、現在合格に向けて学習中の方は、そんなことも考えながら頑張っていきましょう。

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