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財務分析で「期中平均」を使うとき、使わないとき



財務分析で迷う「期中平均」の存在

建設業経理士1級の財務分析をはじめとして、財務分析に関する試験勉強を行っていく中で、多くの受験生が迷ってしまうのが「期中平均」の存在です。

似たような財務分析の公式であっても、期中平均を使ったり使わなかったり、中には同じ公式でも期中平均を使ったり使わなかったりがあることが、混乱の原因となっているようです。

ただ、この期中平均は限られた情報の中で財務分析の結果をより実態に近づけるための工夫であるため、この工夫の真意が分かれば、決して迷わなくなるでしょう。

また、この工夫を知っていれば、財務分析以外の場面でも分析結果がより精緻なものとなります。

今一度、この考え方を財務分析以外の例を使って考えていきましょう。

同じ期間・同じタイミングのものの比較では期中平均不要

例えばということで、とある架空のA市の例を考えてみましょう。
【A市の人口】
《2015年末》95,000人 (内訳、男性:48,000人 女性:47,000人)
《2016年末》102,000人 (内訳、男性:52,000人 女性:50,000人)
2016年末のA市の人口に占める男性の割合、女性の割合は何%になるでしょうか。 102,000人の中に占める男性、女性それぞれの割合を考えればいいわけですから、

 男性の割合:52,000人÷102,000人≒約50.98%
 女性の割合:50,000人÷102,000人≒約49.02%


となります。同じ『時点』の数値をもとにして割合を計算しているこの場合、期中平均を使う必要はありません。

もう1つの事例を、上に書いた架空のA市で考えてみましょう。

2016年、このA市で3回実施されたとある財務分析の検定試験に、合計で1,000人の市民が受験しました。その中で見事300人の市民が合格を果たしました。 さて、A市における2016年のこの検定試験の年間合格率は何%になるでしょうか。これを計算するには、合格者数を受験者数で割ればよいので、

 300人÷1,000人=30%

となります。

この場合、1年間の合格者数と1年間の受験者数という同じ「1年間」という『期間』の数値どうしを使って計算しているので、期中平均は用いません。
期中平均を使わないケース

同じ期間で比較できないときに使う「期中平均」

では、先ほどの例を組み合わせて、2016年中にA市の人口の何%が例の財務分析の検定試験に合格したのかを考えましょう。

2016年の1年間で合格したのは300人、2016年末の人口は102,000人ですから、単純にこの2つの割り算で  

 300人÷102,000人≒約0.29%

とするのも間違いとはいえないでしょう。

ですが、この検定試験は年3回実施されるにも関わらず、年末の段階での人口で割り算をしてよいものでしょうか? 2015年末は95,000人しかいなかったA市の人口が1年間で7,000人も増えています。その間に人口の増減はあったはずですから、それを考慮してあげた方がより正確になるはずです。

そこで登場するのが「期中平均」です。 2016年中に人口が増えたり減ったりを繰り返していて、それをすべて考慮して計算するのは非常に大変です。
ですが、ざっくりと2015年末の人口95,000人と2016年末の人口102,000人を足して2で割った期中平均の人口98,500人で考えれば、単純に2016年末の人口で割るよりも1年間の増減を多少なりとも考慮した数値になるはずです。 期中平均を使うケース この前提で計算すると、

 300人÷98,500人≒約0.30%

となります。

この例では違いがわずかですが、実際の財務分析になると期中平均を考慮するか否かで、大きく変わることも考えられます。

実際の財務分析の例では…

その数値は『期間』の数値?『時点』の数値?

財務分析では、一般的に「貸借対照表」と「損益計算書」を中心に、「キャッシュ・フロー計算書」の数値も必要に応じて使用します。

このうち、「貸借対照表」に記載されている数値は、貸借対照表日『時点』の数値となります。前述のA市の例でいえば、ある時点の人口や男女比などのデータに相当するものといえます。
従って、見ている数値は『ある時点』の総資産(総資本)だったり、『ある時点』の自己資本だったり、『ある時点』の流動資産の金額だったりします。

一方、「損益計算書」と「キャッシュ・フロー計算書」に記載されている数値は、基本的に『期間』の数値です。前述のA市の例でいえば、1年間の検定試験の受験者数や合格者数のデータに相当するものといえます。
従って、見ている数値は『ある期間』の売上高だったり、『ある期間』の利益額(営業利益、経常利益、当期純利益etc)だったり、『ある期間』のキャッシュ・フローの金額だったりします。

この違いをまずははっきりとさせておきましょう。
それが分かれば、実際の財務諸表を使った財務諸表でも「期中平均」を使う場合と使わない場合が整理できるのではないでしょうか。

『期中平均』を使う場合と使わない場合

『ある時点』の数値を載せた「貸借対照表」の中の構成割合や、『ある期間』の数値を載せた「損益計算書」の中の数値の比較、「損益計算書」と「キャッシュ・フロー計算書」の数値同士の計算であれば、期中平均を用いる必要はありません。

一方、『ある時点』の数値を載せた「貸借対照表」の中の金額と『ある期間』の数値を載せた「損益計算書」の中の金額を使って何かしらの比率を求める場合には、期中平均を用いるべきとされています。

以下の例で確かめてみましょう。
 【例】B社の貸借対照表・損益計算書の数値
   当期損益計算書上の売上高:1,000億円
   当期損益計算書上の営業利益:120億円
   前期末の貸借対照表の総資本(総資産):400億円
   当期末の貸借対照表の総資本(総資産):600億円
例えば、「売上高営業利益率(=営業利益÷売上高)」を求める場合には、期中平均を用いる必要はありません。そのまま素直に割り算をして、

 120億円÷1,000億円=12%

とすればOKです。 期中平均を使わない財務分析 では、「総資本営業利益率(=営業利益÷総資本)」を求める場合はどうでしょうか。 営業利益は当期1年間をかけて稼いでいったものです。その結果として、当期末の総資本が600億円に増えたとも考えられますが、その他に増資や合併などで一気に総資本が増えるケースも考えられます。 この例も、前期末から当期末までに総資本が200億円も増えて1.5倍になっている訳ですから、当期の最初の方(総資本が400億円だったころ)のことも考慮に入れてあげなければ、適切な計算はできないといえます。

そこで、まずは総資本の期中平均額を求めてあげます。

 期中平均総資本:(400億円+600億円)÷2=500億円

そして、この期中平均総資本で営業利益率を割ってあげると、1年間の総資本の変動を多少なりとも考慮した「総資本営業利益率」が求められるということになります。

 120億円÷期中平均総資本500億円=24% 期中平均を使う財務分析

例外

ただし、流動性分析に関する比率(必要運転資金月商倍率や○○滞留月数と付くものなど)に関しては、上記の考え方とは異なる考え方をするため、貸借対照表項目についても期中平均は用いません。詳しくは、お手持ちのテキスト等をご確認下さい。

あえて期中平均を使わない例

これまでの事例等で、期中平均を用いた方が適切であるケースとその理由はお分かりいただけたでしょうか。 ただし、試験の場面でも実際の財務分析でも、期中平均を用いるべきケースであえて期中平均を用いずに計算するケースもあります。

考えられる状況としては
  • 前期末の貸借対照表が入手できない
  • 期中の変動が少なく、当期末で計算しても大きな差が生じない
  • 少しでも手間を省きたい
などといったことが考えられます。

前述のB社の例でも、前期末の総資本の額が分からない(問題文に与えられていない)場合などには、期中平均を使わずに当期末の総資本で「総資本営業利益率」を求めることがあります。

 120億円÷当期末総資本600億円=20%

これはケース・バイ・ケースとなりますので、状況に合わせて使い分けるようにしてください。

おまけ

実在の上場企業が作成している「有価証券報告書」を使って、様々な企業の知られざる姿を調べてみようというコラム『有報つまみ食い』でも、財務分析ではありませんが、これまで見てきたのと同じ発想で「期中平均」を用いた分析を行っています。
興味がある方は、ご覧になってみて下さい。
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  • 製造元:
    ネットスクール株式会社
  • 定価:
    2,160円(税込)
  • ISBN:
    978-4-7810-1442-5

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