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バレンタインデーのお返しと「のれん」



※この記事は、簿記や会計の知識を使って普通とは違う角度で考えてみただけの記事です。
 正確性や試験勉強への有効性などを保証するものではありませんので、ご了承ください。

「バレンタインデーのお返し」は負債?

2月14日のバレンタインデーの翌日、ネットスクールの公式Twitterアカウントがつぶやいたこちらのツイートが150回を超えるリツイートを獲得しました。
簿記を学習されている方にとって、身近な例を仕訳に置き換えた考え方というのは、非常に関心があることなのでしょう。 おそらく、こちらのツイートで気になったのは、バレンタインデーでチョコレートを貰ったときの仕訳を考えたときの貸方の科目の性質ではないでしょうか。

タダでチョコレートを貰ったと考えて「チョコレート受贈益」のような収益の発生と考えるのか、それとも、ホワイトデーのお返しとの引き換えにチョコレートを貰ったと考えて「ホワイトデー債務」のような負債の増加と考えるのか…。
※こんなことを本来の簿記では当然ながら取り扱わないので、勘定科目は適当です。

そもそもこんなことを考える人はほとんどいないでしょうから正解はないかと思いますが、もし“負債の増加”とみなして、もう少し会計的に思考を巡らせてみると、意外と面白いことになりそうだというのが、今回の記事です。

ホワイトデーの3倍返しはどのように考える?

3倍返しを仕訳で考えようとすると…

前述の仕訳例では金額を「XXX」と伏せていましたが、実際に金額を当てはめた仕訳を考えようとすると、どうしてもぶつかる壁がしばしば聞かれる「ホワイトデーの”3倍返し”」です。

例えば、1,000円のチョコレートをバレンタインデーに貰った男性は、3,000円相当のお返しをしなければならないことになります。

もらって増えたチョコレートが1,000円、負うことになったお返しの負債を3,000円だと考えて、もし、これをそのまま仕訳にしようとしても、

(借)チョコレート 1,000 (貸) ホワイトデー債務 3,000

のように、貸借が一致しません。
簿記の仕訳は必ず貸借が一致しなければならないので、これを仕訳とするわけにはいきません。

すると、考えられる手段は次のいずれかということになるでしょう。
  1. 『チョコレート』という資産の額を3,000円とする
  2. 『ホワイトデー債務』という負債の額を1,000円とする
  3. 借方に2,000円分、別の勘定を追加する。

考えられる仕訳3パターン 1.の考え方は、納得できる余地があるかもしれません。 3,000円のお返しをしなければならない義務と引き換えにゲットしたチョコレートですから、取得原価3,000円のチョコレートと考えることもできるでしょう。 ただ、普通に買ったら1,000円で購入できるチョコレートを3倍の金額で計上するのは、どうしても違和感がぬぐえません…。

2.の考え方は、いささか問題があるでしょう。 ホワイトデーにお返ししなければならない義務が3,000円分あるにもかかわらず、1,000円分しか負債を計上しないとなると、差額の2,000円分が『隠れ債務』になりかねません。 国際会計基準を含め、会計の世界では『隠れ債務』を排除する方向で進んでいます。その流れにも逆行してしまいます。

3.の考え方は、借方にどんな科目で2,000円を計上するかによっては、最も適切な考え方になるかもしれません

借方にどんな科目を追加する?

前述の3.の考え方を採る場合、どんな勘定科目が適切なのでしょうか。

おそらくここでヒントになるのが、合併や買収などのM&Aの場面で行われる「企業結合」の会計処理でしょう。 現実の企業結合では、受け入れた資産それぞれ単体の価値から負債を差し引いた額以上の対価で合併や買収が行われることがあります。

例えば、これから買収しようと考えているA社(負債はないものとしましょう)の資産それぞれの時価を全部足して10億円だったとしましょう。そういうA社を15億円や20億円出してでも買収するというケースが多々あります。
これは、買収先のA社が持つブランド力や従業員のノウハウ、買収することによる自社との相乗効果(シナジー)といった“はっきりと区別できないメリット”を期待してのことです。
もし、上記のA社を15億円で買収したとすると、5億円は先ほど書いた“はっきりと区別できないメリット”の価値と考えます。この5億円の部分を、簿記や会計の世界では『のれん』(経済誌などでは『のれん代』)という資産としてとらえます。

バレンタインデーの『のれん』?

前述のとおり、『のれん』とは“はっきりと区別できないメリット”であるものの、それに対して対価を支払ってもいいと考えているものです。

先ほどから考えている、バレンタインデーの3倍返しの仕訳のパターン3.に出てくる、借方の謎の2,000円を『のれん』と考えることはできないでしょうか。

お店で1,000円で売られているチョコレートを1,000円超の価値とするのは難しいでしょう。なので、貰ったチョコレートの価値は1,000円とするのが、とりあえず妥当でしょう。ただ、それに対して3,000円のお返しを承知の上で受け取るということは、2,000円分は何かしら目に見えない“はっきりとは区別できないメリット”があるからと考えることができるはずです。
(まぁ、そうはいっても断れないことなどもあるでしょうから、このように言い切れないケースも多々あることは承知ですが…。)

ずっと気になっていた人や学校や職場のマドンナ的な人からもらえるのであれば、その嬉しさや優越感のようなもの(?)、その他いろんな喜びやメリットがあるでしょうから、それを『のれん』という資産で考えてもおかしくないのかもしれません。 バレンタインデーの仕訳とのれん

実際の『のれん』と問題点

実際の会計の世界に目を移すと、自社にとって魅力的な企業をM&Aするためであれば、どんな高い対価を支払っても、大きな犠牲を負うことになっても、M&Aした方がお得と考えます。

先ほどのバレンタインデーとホワイトデーのお返しの関係で例えると、本当に魅力的な相手からのバレンタインデープレゼントであれば、「5倍返し」でも「10倍返し」でもOKだから手に入れたいという気持ちになるでしょう。
そうすると、仕訳で考えると分かる通り、貰うチョコレートの価値は変わらなくても貸方の金額がどんどん膨らんでいく訳ですから、その分だけ『のれん』の金額もどんどんと大きくなってしまいます。

同じように、現実の企業活動でも相手先の企業が魅力的に見えれば見えるほど、M&Aに対しての対価や犠牲がどんどん大きくなってでも手に入れたいと思うでしょう。
すると、手にする資産それぞれの価値は変わらなくてもそれに対する対価が大きくなるわけですから、その分だけ『のれん』の金額が大きくなります。 大きくなるのれん
昨今の経済ニュースで話題になっている「多額の『のれん』」の問題。
問題の根本はもっと複雑ですし、会計処理も複雑なものですが、シンプルに考えるとこういう心理に基づくものと言ってもあながち間違いではないでしょう。

ただ、『のれん』の金額が大きくなればなるほど、本当にそれだけの価値があるのかという疑問が生じてきます。
その疑問が大きな問題として顕在化したのが、経済ニュースでもしばしば聞かれるようになった「『のれん』の減損」の話題となります。
ただ、この話まで進めると長くなるので、今回はこの辺で…。
気になる方は、日商簿記1級や全経簿記上級、税理士の簿記論・財務諸表論の試験勉強などで学んでみましょう。

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