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どうして掛取引を使うの?



掛取引とは…?

簿記を初めて学ぶ学生の方々にとって、テキストで頻繁に登場するものの日常生活での馴染みが薄くイメージしづらいものが『掛取引』ではないでしょうか。

代金を後払いにして商品を売買する『掛取引』。
テキストなどで「ツケ払いのことです」と説明されることもありますが、いまどき「ツケ払い」自体も馴染みが薄いのかもしれませんし、学生の方ならなおさらです。
スーパーやコンビニエンスストア、ファミリーレストランや喫茶店などでは現金での支払いが当たり前です。 また、全国各地で急速に普及している電子マネーは『前払い』ですので、『掛取引』とは真逆です。

この『掛取引』、商品を買う側からしてみれば「代金を後で支払ってOK」というメリットが分かりやすいのですが、売る側の立場で考えると、「商品を売ってもすぐにお金がもらえない」「支払いを拒むお客や倒産して払えなくなったお客がいたらどうしよう」といったデメリットばかり思い浮かんで、なぜ掛取引を行うのか、ピンとこないかもしれません。

今回は、そんな掛取引のメリット・デメリットや歴史について、簡単に学んでいきましょう。

掛取引のメリット

厳密にいえば『掛取引』に該当しないのかもしれないことを承知の上で、学生の方にもイメージしやすい例を“新聞配達”で『掛取引』のメリット考えてみましょう。

毎日、朝早くに自宅に新聞を届けてくれる“新聞配達”。
この毎日の新聞の代金は、新聞配達のタイミングではなく、別のタイミングで1か月分などまとめて集金の人が訪ねてきたときに支払います。
代金を後で支払うということで、一種の『掛取引』とみなすこともできます。

もし、新聞配達が毎日配達時に代金を現金で決済する方式だったらどうなるのでしょうか…?

もしも新聞配達がその都度現金払いだったら…?

新聞配達をする側からしてみれば、お釣りを返せるように小銭をジャラジャラと大量に抱えて配達することになりますし、一軒一軒配達するつどお金を払ってもらうように起こさなければならないため、配達スピードが劇的に遅くなります。
すると、決まった数の新聞を決まった時間までに配達できるようにするため、多くの配達員を雇う必要が出てきてコストがかさんでしまいます。

一方、新聞を受け取る側からしてみれば、毎朝早朝に叩き起こされて代金を払い続けるのは非常に大変です。数か月続けば、「もう結構です」と新聞の購読を止めたくなる可能性が高くなるでしょう。新聞社としては、購読者が減ってしまうリスクが高くなってしまいます。

このようなデメリットを考えれば、多少払ってもらえないリスクがあったとしても、配達員には配達に専念してもらって、集金はまとめて別の人にやってもらった方が配達してもらう側も含めて楽ですし、コスト面や売上面を考えてもトータルで有利でしょう。

また、払ってもらえないリスクがあるとはいえ、自宅は既に分かっていますし、居留守は使われるかもしれませんが、引っ越されることまでは少ないでしょう。なにしろ、新聞の代金よりも引っ越しの方が普通は高くつきますから…。

企業やお店での掛取引

企業間の取引も似たような側面があり、例えば飲食店が毎日のように食材や飲み物を仕入れたり、スーパーマーケットがお菓子や日用品を仕入れたりする場面で、その都度代金を支払うように現金を用意していては、お店側も大変です。また、企業間の取引では大量の商品をやり取りすることから、専門の運送会社に配送を任せる場合があるため、その場で代金をやり取りするのは現実的ではありません。

そのため、企業間の取引では、掛取引が一般的になっています。
簿記検定の問題では売掛金や買掛金がいろんなタイミングで支払われているイメージかもしれませんが、実務上よくあるケースは「毎月末締・翌月末払い」といった条件です。 月中は商品を納品するだけにしておき、月末に1か月間の取引額を集計します。集計が終わったタイミングで「3月分の販売額¥○○の代金を、4月末日までに指定の口座にお支払いください」といった旨の記載がある請求書を作って買い手に送り、月末に支払ってもらうという流れです。

このようにすることで、頻繁に行われる商品の受け渡しも、代金の決済も効率化することができるのです。

昔は『掛取引』が当たり前?

今でこそ日常生活ではなじみが薄くなった『掛取引』ですが、江戸時代までは比較的メジャーな取引であり、呉服などの高価な買い物に関しては『掛取引』が当たり前でした。
しかしある時、この『掛取引』ではなく、今では当たり前になった『現金販売』を日本で初めて行ったのが、三井高利(たかとし)という人物だと言われています。

従来の呉服店は得意先の自宅を訪れて掛で販売するのが一般的でしたが、これでは資金繰りに苦労してしまう可能性が高くなります。そのうえ、代金を貰えない期間の金利に相当する分や貸倒れリスク、更に訪問するためのコストを織り込んだ価格で呉服を販売するため、値下げが困難な販売方法でした。

彼はこの販売方法を改め、店頭で現金さえ払えば誰でも呉服が買えるような商売方法を始め、大繁盛しました。
このお店が「三井の越後屋」、今の「三越百貨店」のルーツと言われています。
三井高利の行った斬新な方法については、『三井広報委員会』というホームページにも詳しい説明がありますので、お時間があるときにご覧になってみてはいかがでしょうか。
先ほどは掛取引のメリットや利便性を考えてきましたが、三井高利が江戸時代に取り入れた手法から、売り手にとっては掛取引を使わない方が良いケースがあることもお分かりいただけるかと思います。
掛取引には、売り手にとって以下のようなデメリットもあるため、時と場合によっては掛取引を使わない方が有利になることもあります。
  • 代金の回収まで時間がかかり、資金繰りに苦労しやすい
  • 代金を払ってもらえない貸倒れのリスクがある
  • 信用できる相手かを調べたり、代金を回収したりするために手間やコストがかかってしまう
  • 現金販売よりも高い値段で売らないとやっていけない

そのため、掛取引のメリット・デメリットをきちんと把握し、相手や状況に合わせて適切な決済方法で販売することが重要となります。

ちなみに、「掛け値なし」という言葉をご存知でしょうか?この言葉は、『掛取引』に由来する言葉です。
上でも説明したとおり、掛取引での値段は金利相当分や貸し倒れリスクなどを織り込んだ価格で設定されるため、本来の商品の定価よりも高い値が付けられます。
そうした『掛取引』で上乗せされたコストが無い状態、すなわち本来の商品の定価や価値の意味から転じて、物事が誇張されずに言葉どおりの様子であることを「掛け値なし」というようになりました。
このような慣用句が作られるほど、昔の日本では『掛取引』が当たり前だったことがうかがえます。

また、『掛取引』では販売価格が高くなってしまう事情を知ったうえで、あえて「現金ですぐに払うから安くして買いたい」と交渉する企業もあります。そうすることで商品を安く仕入れ、他店よりも安い価格で販売して多くのお客を呼び込もうという戦略です。

日常生活では馴染みが薄い『掛取引』ですが、その成り立ちや仕組みを知っていると、簿記や会計の世界だけでなく、ビジネスモデルの構築や交渉での切り札としても使える知識となることがあります。
何気なく何度も簿記のテキストや問題集に登場する『掛取引』、せっかく学ぶ知識ですので、その裏側もぜひ知っておきましょう。

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