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簿記の問題で方程式を立ててみよう



簿記検定は数学の試験ではない

前回までの記事で、文字を使った式のルールや方程式の解き方に関する基本的な考え方に触れてきました。
おそらく、シンプルな方程式であれば(電卓を使ってでも)解けるようになったかと思います。

ですが、簿記検定は数学の試験ではないため、ダイレクトに「方程式を解きなさい」という問題が出ることは考えにくく、問題文や資料から自分で方程式を組み立てて、その方程式を解くケースの方が圧倒的に多いのも事実です。

そのため、単に方程式が解けるだけでは不十分で、簿記検定では分からない数字を文字にして方程式を組み立てられる力も重要となります。

そこで、今回の記事では簿記検定などで出題することが想定される、方程式を使う推定問題の事例をいくつか挙げて、方程式を組み立てる過程について考えてみましょう。

簿記検定でありがちなケース

売上原価に関連する計算問題

例えば、以下のような問題で考えてみましょう。
【設例】
 以下の資料に基づき、当期商品仕入高を求めなさい。
  ・当期損益計算書上の売上原価:20,000,000円
  ・当期末貸借対照表上の商品:520,000円
  ・前期末貸借対照表上の商品:590,000円
ボックス図を使ったり、頭の中で計算式を組み立てられたりすることができる方は問題ないかと思いますが、不安な方は売上原価算定の式から方程式を組み立てるのが無難でしょう。

売上原価は以下の式で求められます。
  期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高=売上原価

期首商品棚卸高は前期末貸借対照表上の商品の金額、期末商品棚卸高は当期末貸借対照表上の商品の金額が該当しますし、売上原価も資料に与えられています。

そこで、資料から分かる金額そのまま上記の式に当てはめ、現時点では分からない当期商品仕入高は「x」を当てはめてみましょう。

すると、
  590,000+x-520,000=20,000,000
という方程式を組み立てることができます。

整理すると、
  x+70,000=20,000,000
      x=20,000,000-70,000
      x=19,930,000
となり、xとした当期商品仕入高が19,930,000円であることが分かります。

テキストなどに載っている計算式がそのまま使える場合、この式の中で分かっている金額はそのまま当てはめ、分からない金額(求めるべき金額)をxなどの文字で置き換えることで、方程式を組み立てることができます。

有形固定資産の取得原価を推定する問題

この他に簿記検定で方程式を使うケースとして、代表的なものが有形固定資産の取得原価を推定する問題です。

土地・建設仮勘定を除く有形固定資産は、毎年減価償却を行うことで、帳簿価額が減少していきます。
直接法で記帳している場合、減価償却費を計上した分だけ、有形固定資産の勘定(建物、備品など)の金額が直接減らされていくので、有形固定資産の勘定残高を見ても取得原価は分かりません。
一方の間接法の場合、毎期計上した減価償却費は『減価償却累計額』勘定に記帳されていくため、有形固定資産の勘定(建物、備品など)の残高自体は原則として取得原価のままとなりますが、作問の都合上、たびたび隠されることが多々あります。

このような背景のためか、固定資産の取得原価を推定しなければならない問題は比較的作りやすいことから、方程式を使わなければ解けない問題が出題されるケースをよく見かける印象があります。

この場合、定額法で減価償却を行っている場合と、定率法で減価償却を行っている場合で式の組み立て方がかなり異なるので、それぞれ見ていきましょう。

定額法の場合

有形固定資産の帳簿価額は、以下の式で計算することができます。

  取得原価-減価償却累計額=帳簿価額

求めたい金額が取得原価であれば、取得原価を「x」とおけば良いのですが、そこから先が厄介です。

減価償却累計額は、これまで毎期計上した減価償却費の累計額です。
定額法における毎期の減価償却費は「(取得原価-残存価額)÷耐用年数」という式で求めることため、この減価償却費を累計した減価償却累計額の金額も取得原価がベースになっています。取得原価は分からない(今から求めようとしている)訳ですから、減価償却累計額自体も「x」を使った式でしか表せないことになります。

ただ、減価償却累計額を「x」を使った式で表すことができれば、これを「取得原価-減価償却累計額=帳簿価額」という式の『減価償却累計額』の部分に当てはめることで方程式を組み立てることができます。

以下の設例で確かめてみましょう。
【設例】
  X1年1月1日に取得した車両のX4年1月1日現在の帳簿価額は2,500,000円である。
  この車両は定額法(耐用年数:8年、残存価額はゼロ)で償却している。
  この車両の取得原価を求めなさい。なお、当社の決算日は毎年12月31日である。
取得原価を「x」とおくと、毎年の減価償却費は「x÷8」、すなわち「1/8×x」で表すことができます。取得から3年が経過しているので、減価償却累計額はその3倍の「3/8×x」となります。
帳簿価額の2,500,000円は取得原価から減価償却累計額を差し引いた額ですから、ここまでの内容を踏まえると、次のような方程式を組み立てることができます。

  x-3/8×x=2,500,000

計算すると、
5/8×x=2,500,000
   x=4,000,000
と求めることができます。

定率法の場合

2級で学習する定率法では、毎期の減価償却費を以下のような式によって計算します。

 減価償却費=(取得原価-期首減価償却累計額)×償却率

式を見て分かるとおり、取得原価をベースに計算する定額法と異なり、定率法では期首帳簿価額に一定の償却率を掛けて減価償却費を計算します。
この「期首帳簿価額」が、減価償却によって毎期減少していくのが厄介なところです。

例えば、取得原価が1,000,000円の備品を年償却率20%の定率法で償却していくとしましょう。

1年目の減価償却費は「1,000,000円×20%=200,000円」となります。この段階で、帳簿価額は200,000円減った800,000円になっています。

そして2年目の減価償却費は、1年目の減価償却によって200,000円減少した後の期首帳簿価額800,000円に20%を掛けて、「800,000円×20%=160,000円」となります。
従って、2年目の減価償却が終わると、帳簿価額は更に160,000円減って640,000円になります。

更に3年目の減価償却費は期首帳簿価額640,000円に20%を掛けて……と計算していく訳ですから、取得原価を「x」とおくだけでは毎年の減価償却費や減価償却累計額の式を組み立てるのは難しそうです。

では、見方を変えて帳簿価額の方で考えてみましょう。
上記の例のように償却率が年20%の定率法の場合、1年目の減価償却費を計上した後の帳簿価額は、100%から償却率20%を引いた80%分の800,000円となっています。
2年目の減価償却費を計上した後の帳簿価額は、800,000円にもう一度80%を掛けた640,000円となっています。この金額は、取得原価1,000,000円に80%を2回掛けた金額であると考えることもできます。

このように、定率法で減価償却を行っている場合、原則として取得原価に「1-償却率」を年数分掛けた金額が帳簿価額になるという関係にあります。
定率法のケースで取得原価を推定する必要がある場合、この関係を使って方程式を組み立てます。
※ 期中取得した有形固定資産や、改定償却率を用いて減価償却費を計算することになった場合はもう少し複雑な計算が必要となります。ただし、これらを考慮すると記事も長くなるので、ここでは割愛します。

以下の例を見てみましょう。
【設例】
  X1年1月1日に取得した車両のX4年1月1日現在の帳簿価額は2,048,000円である。
  この車両は定率法(償却率:年20%)で償却している。
  この車両の取得原価を求めなさい。なお、当社の決算日は毎年12月31日である。
この設例では、取得から3年が経過しています。
毎年の決算で帳簿価額の20%が減価償却費になって、残りの80%(=1-20%)が次期の帳簿価額として繰り越される訳ですから、帳簿価額は1年経つごとに前期の帳簿価額に80%を掛けたものになるので、取得原価を「x」とおいて、そこから3年分、「×(1-20%)」を繰り返した結果が、X4年1月1日現在の帳簿価額2,048,000円であるという関係を導き出すことができます。

これを方程式に表すと、

   x×(1-20%) ×(1-20%) ×(1-20%)=2,048,000

となるので、この方程式を解くと
   x×(1-20%) ×(1-20%) ×(1-20%)=2,048,000
   x×0.8×0.8×0.8=2,048,000
   0.512x=2,048,000
      x=4,000,000

つまり、取得原価は4,000,000円であることが求められます。

最後に

試験の難易度が上がると、まだご紹介していないようなケースでも方程式を使って推定しなければならない場面が増えてきますが、まずは分かりやすいところから方程式に慣れておくのがよいでしょう。
冒頭にも述べましたが、簿記の試験は数学の試験ではありませんので、方程式そのものを解くだけではなく、分かっている情報と分からない情報を峻別して、まず方程式を組み立てる力が必要です。

高得点を狙いたいけれども、いまいち方程式に自信が無い方は、スキマ時間を見つけて方程式に慣れていくようにしましょう。

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