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『又は』と『若しくは』の使い分け



先週の記事では、法律や会計基準における「及び」と「並びに」の使い分けについて説明していきましたが、同様に使い分けられているのが「又は」と「若しくは」という2つの言葉です。 今回は、この2つの言葉の使い分けについてみていきましょう。

選択肢を並べる「又は」と「若しくは」

又は」と「若しくは」は、いずれも選択的接続詞と呼ばれ、複数のモノ(名詞)や行為(動詞)を選択肢として列挙するときに使うものです。
英語で言えば「or」に当たるもので、単体で見れば同じ意味ですが、法律や会計基準では明確な使い分けがなされています。

単純に並べるだけの場合は「又は」を使う

同じ意味の語句を単純に並べる場合は「又は」を使って繋げます。
(例) 金融資産又は金融負債  ← 金融資産 or 金融負債
もし、3つ以上の語句を選択肢として列挙する場合は、最後だけ「又は」を使い、それ以外は「、」で繋げることになっています。
例えば、旅行の行先として四国にある4つの県を選択肢として列挙するのであれば、次のように書かれることになります。
(例) 徳島県、香川県、愛媛県又は高知県
※先週の記事でも念のためお伝えしていましたが、今回もJIS規格で定められている都道府県コードの若い順に並べただけで、この並びに他意はございません。

「又は」で並べた選択肢の中に更に選択肢を設けるときは「若しくは」を使う

「又は」で並べた選択肢の中に、更に細かい選択肢を列挙する場合は「若しくは」という接続詞を使います。

イメージしやすいように、友人と出かけている最中にどこかで食事にしようかと話している場面を考えてみましょう。

「お昼ご飯、何にしようか?」と尋ねられた時、自分としてはラーメンかスパゲティが食べたい気分だとしましょう。
そうすると、お店としてはラーメン屋かイタリアンレストランのどちらかという選択肢になります。
ただ、ラーメン屋に行くとしてもあまりこってり系のラーメンを食べる気分ではなく、ラーメンだとしたら醤油ラーメンか塩ラーメンが食べたいとします。

この状況で食べたいものを、法律や会計基準における「又は」と「若しくは」の使い方にならって伝えようとすると、以下のようになります。
(例) 醤油ラーメン若しくは塩ラーメン又はスパゲティ
もし、スパゲティの中でも希望があって、ナポリタンかペペロンチーノがよければ、以下のように書くことになるでしょう。
(例) 醤油ラーメン若しくは塩ラーメン又はナポリタン若しくはペペロンチーノ
このように書くことで、まずはラーメンかスパゲティのどちらかが選択肢になっていること、ラーメンであれば醤油ラーメンと塩ラーメンのどちらか、スパゲティであればナポリタンかペペロンチーノのどちらかが食べたいことが、(法律や会計基準の言葉遣いが分かる友人であれば)一発で迷うことなく伝わることになります。
※面倒な人間だと思われても責任は負いかねます…。

なお、めったにない状況ですが、更に細かい選択肢がある場合は「若しくは」を使っていくことになっています。裏を返せば、「又は」という接続詞は最も大きな選択肢を列挙するときしか使わないことになります。

法令や会計基準で見てみよう

それでは、「及び」と「並びに」の違いをみてきたときと同様に、実際に「又は」と「若しくは」が使い分けられている法令や会計基準を見て、どのように読み取るのか、一緒に見ていきましょう。

まずは『会社法』です。残念ながら、簿記に関連する条文で「又は」と「若しくは」の両方を使っている箇所がないので、事件としてニュースなどで今後参照する可能性がある別の箇所の条文を見てみましょう。

主に取締役や監査役といった会社の役員と呼ばれる人たちは、会社の(利益の)ために働くことが一般的にも会社法上でも求められています。
しかし、その期待を裏切る行為を行った場合、会社法第980条に規定される特別背任罪に問われる可能性があります。

この特別背任罪に関する規定が書かれている会社法960条第1項の箇条書き以外の部分(柱書)を抜粋してみましょう。
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

―会社法第960条第1項柱書

この条文の中に「又は」と「若しくは」の使い分けが2箇所登場しています。使い分けを知っていれば、ある程度読みやすくなるのではないでしょうか。

また、会計基準でも同じような使い方がなされています。
あまり簿記検定や税理士試験で話題にはなりませんが、分かりやすいところでは「関連当事者の開示に関する会計基準」という会計基準の第5項(1)にある、“関連当事者との取引”という用語の定義で用いられています。
「関連当事者との取引」とは、会社と関連当事者との取引をいい、対価の有無にかかわらず、資源若しくは債務の移転、又は役務の提供をいう。(以下略)

―関連当事者の開示に関する会計基準第5項(1)

「又は」と「若しくは」についても、すべての文章がこのような点を意識して接続詞を使っているとは限りませんが、簿記や税理士の試験勉強で参照することの多い法令や会計基準の文章は、概ねこの法則に沿って書かれていますので、こちらも知っておくと、法令や会計基準を読むのがスムーズになることでしょう。

「又は」と「若しくは」という接続詞が出てきたときも、どういった選択肢の構造になっているのか考えてみてはいかがでしょうか?

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